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低い圧力や粉砕工程で相転移する超セラミックス センサー材料活用で期待:研究開発の最前線
北海道大学は、低い圧力や粉砕工程で相転移する超セラミックスを開発した。圧力や応力によって特性が変化するセンサー材料への展開が期待される。
北海道大学は2025年3月25日、北陸先端科学技術大学院大学、京都大学との共同研究で、低い圧力や粉砕工程で相転移する超セラミックスを開発したと発表した。
超セラミックスは、複数の原子によって形成される分子アニオンを含むセラミックスだ。研究グループは、炭素と窒素からなる分子アニオン(NCN2−)を含む、マルカサイト型構造のカルボジイミド化合物Ba0.9Sr0.1NCNを合成。ダイヤモンドアンビルを用いた静水圧実験を実施し、0.3GPaの印加で塩化セシウム型構造への相転移を確認した。
この化合物は、乳鉢と乳棒を用いた手粉砕でも、加圧した場合と同様の構造相転移が生じる。相転移中の原子の動きをVCNEB法で分析したところ、粉末にかかる横方向の応力により原子が互いにすべるように変位することが判明した。

相転移中の原子の変位を可視化した図。(a)はマルカサイト型構造のb軸方向から、(b)はc軸方向から見た図。相転移中でBaイオンの層はc軸方向にずれて変位し、カルボジイミドイオンは回転して互いに直交する[クリックで拡大] 出所:北海道大学
また、ユウロピウム(II)イオン(Eu2+)を添加すると、相転移によって非発光性から赤色蛍光体へと変化する。
刺激応答性の発光材料など、圧力や応力によって光学特性や電磁気特性が変化するセンサー材料への展開が期待される。
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