産業データ連携に必要な「信頼性」とは? 経産省がウラノス基盤拡張で報告書:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
経済産業省は、信頼性のある産業データ連携の実現に向け、日本版データスペース「ウラノス・エコシステム」におけるトラスト確保の報告書を公開した。自動車の蓄電池や化学物質管理などのユースケースを基に、リスク要因と対応策などを整理している。
自動車と蓄電池のカーボンフットプリントのデータ連携事例
代表的なユースケースの1つとして紹介されたのが、自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター(ABtC)による自動車の蓄電池業界横断でのサプライチェーンデータ連携の事例だ。ABtCは、自動車や蓄電池サプライチェーン上の企業間で安全、安心にデータ連携を実現し、環境規制への対応と社会課題の解決を業界協調で進めることで産業全体の競争力の向上につなげることを目指している。その必要基盤としてウラノス・エコシステムを活用している。
報告書では、自動車の蓄電池におけるカーボンフットプリント情報や環境デューデリジェンス情報を対象に、データ連携を行う仕組みを取り上げ、先述した4つの質問に合わせた検証を行い、要求される水準のトラストが確保されていることを確認したとしている。
同様に、Chemical Management Platform(CMP)タスクフォースが推進している化学物質管理情報の連携についても、ユースケースとして取り上げ、トラストが確保されているかの検証を行った。結果として、連携するデータの精度や1万社規模を見込む事業者の確認と管理が課題としている。
さらに、電力データ管理協会が行う電力データ連携サービスについても分析した。こちらは、データ連携の拡大に向けて、サービス利用者(事業者含む)のひも付けや同意取得の効率化が課題としている。
今後は、個々のユースケース内での要件の整理などを行う一方で、ユースケース間連携におけるトラストの確立や相互運用性の確保、スケーラビリティのある有用なアーキテクチャと共通コンポーネントの整備などが求められる。さらに、複数の海外データスペースとの連携などを論点として検討していくとしている。
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