Rapidusは新工場稼働間近、クエスト・グローバルとの協業でRUMSモデルが完成へ:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
Rapidusとクエスト・グローバルが2nmプロセスのロジック半導体に関するMOC(協力覚書)を締結した。Rapidusがクエスト・グローバルの新たなファウンドリーパートナーになるとともに、クエスト・グローバルはRapidusの2nmプロセスを用いて半導体を製造する顧客に対して半導体設計に関する人材やエンジニアリングソリューションを提供する。
クエスト・グローバルからRapidusに対して500人以上のエンジニアを派遣
半導体のビジネスモデルは、日本の半導体メーカーが高いシェアを誇った時代の垂直統合から、現在はファブレスやファウンドリーが役割分担する水平分業に移行している。小池氏は「しかし、これからのAI時代に向けて求められるのは、水平分業よりも短期間で先端AIチップの量産を可能にするRUMSモデルだと考えている。RUMSモデルはスピードに加えて、AIチップ顧客にいる新製品開発に向けたアジャイルさも実現していく。クエスト・グローバルとの協業を通して、半導体の回路設計に関わるエコシステムが拡充して、同社の顧客ネットワークにもアクセスできるようになり、RUMSモデルの浸透を広げやすくなるだろう」と強調する。
クエスト・グローバルは半導体の設計開発支援を中核とするエンジニアリング企業である。グローバルで2万1000人以上のエンジニアを有し、このうち日本の顧客をサポートするエンジニアは2300人以上に達する。また、7nm、5nm、3nm、2nmプロセス技術を含む半導体設計のエンジニアリングソリューションも提供している。
クエスト・グローバル 共同創業者兼CEOのアジット・プラブ(Ajit Prabhu)氏は「これからのAI時代を開くカギになるのが2nmプロセス半導体だ。これから先の20年間はAIによる大きな変革期を迎えるが、エンジニアリングにもルネサンスが起きる。これは大きなチャンスであり、クエスト・グローバルとRapidusは2nmプロセス半導体の開発期間を大幅に短縮することで重要な役割を果たしていきたい」と述べる。
クエスト・グローバルは、Rapidusに対して500人以上のエンジニアを派遣し半導体の回路設計に関わる業務を支援する方針だ。「顧客の求めに応じて、Rapidusの千歳工場にとどまらず、米国のカリフォルニア州やテキサス州のオースティンなど、エンジニアの派遣先は変わってくるだろう」(プラブ氏)。
Rapidusが当面の顧客として想定しているのは、海外を中心とするカスタムAIチップを求める企業だ。小池氏は「これらの企業は半導体の回路設計を全て自前で行っておらず、クエスト・グローバルのようなエンジニアリング企業が支援している。Rapidusにとっての想定顧客の設計に既に深く関わっているということであり、クエスト・グローバルの顧客ネットワークにアクセスできる今回の協業は非常に重要だと考えている」と説明する。
なお、Rapidusは現在30〜40社の企業を顧客候補として交渉を進めている。これらの顧客層は主に3つに分かれ、1つ目は先述したカスタムAIチップを開発する企業、2つ目は先端半導体の製造で先行するTSMCを代替可能なファウンドリーとして検討する半導体メーカー、そして3つ目が新たなアーキテクチャでAI技術の革新を目指す新興企業である。小池氏は「こういった新興企業に向けてシャトルサービス(1枚のウエハーに複数社のチップを作り込んで提供するサービス)を展開したい」と意気込む。プラブ氏も「そういった新興企業の開拓も共同で進めたい」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
IBMとRapidusが2nmプロセス半導体の量産に向け「重要なマイルストーンに到達」
IBM ResearchとRapidusは、新たなエッチングプロセスであるSLR(Selective Layer Reductions:選択的薄膜化)を用いて、マルチ閾値電圧を持つナノシートGAAトランジスタを製造できるようになったと発表した。徐々にベールを脱ぐRapidus新工場、最新の状況は?
半導体サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2024」が開幕し、オープニングセッションには官民の主要メンバーが登場した。同セッションでは、Rapidus幹部による工場建設の現状報告に注目が集まった。「世界で勝ち抜く意識が足りず」Rapidus東氏が語る国内半導体の過去と未来
キャディが開催した「Manufacturing DX Summit 2023」から、同社 代表取締役の加藤勇志郎氏と東京エレクトロンで会長を務めたRapidus(ラピダス) 取締役会長の東哲郎氏による対談を抜粋して紹介する。PFNの次世代MN-CoreをRapidusが製造、さくらインターネットと国産AIインフラ構築
Preferred Networks(PFN)、Rapidus、さくらインターネットの3社は、グリーン社会に貢献する国産AIインフラの提供に向けて基本合意を締結したと発表した。チップレット量産技術を開発、Rapidusが後工程研究開発機能を北海道千歳市に設置
Rapidusは、北海道千歳市のセイコーエプソン 千歳事業所内にクリーンルームを構築し、半導体後工程の研究開発拠点「Rapidus Chiplet Solutions(RCS)」を開設する。Rapidusに追加で5900億円の支援、EUV露光機の導入やクリーンルームなどの稼働に
Rapidusは、NEDOから2024年度の予算と計画の承認を受けたことを発表した。これによるRapidusへの追加支援額は5900億円になるという。