Rapidusは新工場稼働間近、クエスト・グローバルとの協業でRUMSモデルが完成へ:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
Rapidusとクエスト・グローバルが2nmプロセスのロジック半導体に関するMOC(協力覚書)を締結した。Rapidusがクエスト・グローバルの新たなファウンドリーパートナーになるとともに、クエスト・グローバルはRapidusの2nmプロセスを用いて半導体を製造する顧客に対して半導体設計に関する人材やエンジニアリングソリューションを提供する。
Rapidusとシンガポールのクエスト・グローバル(QUEST GLOBAL SERVICES)は2025年3月25日、東京都内で会見を開き、2nmプロセスのロジック半導体に関するMOC(協力覚書)を締結したと発表した。同MOCでは、Rapidusがクエスト・グローバルの新たなファウンドリーパートナーになるとともに、クエスト・グローバルはRapidusの2nmプロセスを用いて半導体を製造する顧客に対して半導体設計に関する人材やエンジニアリングソリューションを提供する。両社で協力して、AI(人工知能)半導体を手掛ける新興企業の顧客開拓も進める方針だ。
RapidusはIBMやベルギーのimecなどとの協業を通して、2nmのGAA(Gate All Around)プロセスによるロジック半導体の量産を目指しており、北海道千歳市に新工場「IIM-1(Innovative Integration for Manufacturing)」を建設しているところだ。Rapidus 代表取締役社長の小池淳義氏は、ドローンで撮影したIIM-1の外観を示しながら、「IIM-1のクリーンルーム構築や装置搬入は順調に進んでおり、予定通り2025年4月から稼働を始められるだろう」と足元の状況を報告した。
「RUMSにより最適な専用チップを最速で顧客に届ける」
Rapidusが2nmプロセス半導体の主な顧客として見込むのが、生成AIの学習や推論をより効率的に行うためのAIチップを製造する企業だ。NVIDIAやAMD、インテルなどの半導体メーカーだけでなく、GAFAM(Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazo.com、Microsoft)に代表される大手プラットフォーマーも独自のAIチップを開発している。
小池氏は「かつて半導体の性能向上はムーアの法則で示される通り2年で2倍のペースだった。しかし、2012年の発表されたAlexNetなどのAIの登場によって、AIの計算処理に求められる半導体の性能は3〜4カ月で2倍となり、ムーアの法則を超えるようになっている。これによってAIチップの需要が急増しており、半導体製造プロセスも3nmや2nm、1.4nmなどに急速にシフトしつつある」と語る。
この先端半導体製造プロセスにおいて、Rapidusが差別化のポイントとするのが「スピード」だ。ウエハー上に回路を作り込む前工程と、ウエハーから切り分けたチップを組み合わせてパッケージングする後工程、そして半導体の回路設計に関するソリューションを相互に連携させる「RUMS(Rapid and Unified Manufacturing Service)」モデルを構築しており、「RUMSにより最適な専用チップを最速で顧客に届ける」(小池氏)という。
またRUMSモデルでは、設計に製造を合わせるDFM(Design for Manufacturing)だけでなく、製造に合わせて設計も最適化するMFD(Manufacturing for Design)も並行して行うことで、設計と製造の同時最適化「DMCO(Design Manufacturing Co-Optimization)」も目指している。そして、RUMSモデルにおける半導体の回路設計に関するソリューションとDMCOにおける設計側で大きな役割を果たすことが期待されるのが、今回の協業パートナーとなったクエスト・グローバルだ。
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