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「世界で勝ち抜く意識が足りず」Rapidus東氏が語る国内半導体の過去と未来モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

キャディが開催した「Manufacturing DX Summit 2023」から、同社 代表取締役の加藤勇志郎氏と東京エレクトロンで会長を務めたRapidus(ラピダス) 取締役会長の東哲郎氏による対談を抜粋して紹介する。

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 製造業向けの受発注プラットフォームを手掛けるキャディは2023年1月25〜27日にかけて、製造業のデジタル化をテーマとした年次オンラインイベント「Manufacturing DX Summit 2023」を開催した。その中から本稿では、同社 代表取締役の加藤勇志郎氏と東京エレクトロンで会長を務めたRapidus(ラピダス) 取締役会長の東哲郎氏による対談を取り上げて紹介する。


キャディ 代表取締役の加藤勇志郎氏(左)とRapidus 取締役会長の東哲郎氏(右) 提供:キャディ

国内半導体市場取り巻く環境に変化

 対談テーマは「日本の製造業がもう一度グローバルイニシアチブを取るために」で、日本国内の半導体産業の変遷や課題、展望を軸にディスカッションを行った。東氏が取締役会長を務めるRapidusは、日本における2nmプロセス半導体の量産を担う企業として選定されている。

 現在、日本はPCなど電子機器に使われる半導体の多くを輸入に頼っている。しかし、アジアや欧州における地政学的なリスクの高まりや、産業界でカーボンニュートラルが進み技術革新が求められる中、こうした環境にも変化が生じていると東氏は指摘する。

「かつて、1980年代後半から1992年ごろまで日本は世界半導体市場で50%程度のシェアを占めていた。日本が中心となって米国や欧州、アジアの半導体産業をつなぎ、リーダーシップを持っていた。それが10%程度にシェアが落ちてきている」(東氏)

 加えて半導体の輸入依存が強まったことで、最先端の半導体技術も空洞化した。東氏はこの点を何としても挽回したいとした上で、「汎用の半導体だけでなく専門化した半導体の需要が高まっている。国家レベルでは安全保障やカーボンニュートラル、金融の観点から、民間レベルでは製造業や自動車などでこれからさらに需要が高まる」(東氏)として、これらのニーズに応えられるようにしたいと意気込みを見せた。

韓国半導体メーカートップが語った市場成長の理由

 加藤氏は現在の状況を見ると、日本が50%のシェアを獲得していた時代が「信じられないように感じる」(同氏)として、当時、日本が世界トップシェアを取れた理由を尋ねる。

 これに対して東氏は「1980年代には日本政府や産業のトップレベルで今後はコンピュータが世界を動かすことになると認識しており、対応しなければならないという危機感が国全体に醸成されていた」と語る。しかし1990年代になると日米貿易摩擦やアジアの半導体産業の成長に伴い、「米国とアジアの板挟みで日本がなかなか思い切って力を尽くすことができなくなった」(同氏)という。

 さらに東氏はその後のシェア低下の要因として、しばしば指摘される国内半導体産業の「自前主義」なども問題ではあったが、一番大きな要因としては「グローバルな観点で、どうやったら半導体産業の競争力を高められるかを突き詰めきれなかったのではないか」と指摘した。

 東氏は過去に、韓国の大手半導体メーカートップに日本の半導体産業が落ち込んだ理由と、その一方で韓国で同産業が成長した理由を尋ねたと振り返る。その回答は、「韓国には日本と違い国内半導体市場が成熟していなかったので、初めから世界がどう動いてるかを意識することが重要で、その中でどう勝ち抜くかを常に考えてきた」というものだった。

 これを受けて東氏は「日本ではそう考えずとも『そこそこやっていればいい』という姿勢で経営することが可能だった。それが今のこうした状況を引き起こしたのではないか」と考えたという。加藤氏は「世界的なスタートアップがシリコンバレーだけでなく、ルーマニアや韓国、台湾といった国や地域から生まれてくることに通じる話かもしれない」と応じた。

 半導体そのものを扱う企業は衰退したが、一方で半導体製造装置などの市場では、今なお日本企業がグローバルな存在感を見せている。東氏は東京エレクトロンをはじめ、半導体製造装置を手掛ける専業メーカーには「半導体製造装置をやらなくなれば会社がなくなる」という意識があったとして、「その意味で、最初から世界を常に見てきたという面がある」と語った。そして、Rapidus設立後に集まった人材からは、このように世界シェアを意識した思いが見えてくるとした。

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