肝臓モデルの試供に向けた業務提携を締結:医療技術ニュース
TOPPANホールディングスとフェニックスバイオは、業務提携契約を締結した。同提携により、3D細胞培養技術「invivoid」を用いて体外で作製した「人工3次元肝臓組織」を研究者に試供し、医薬品開発に貢献する。
TOPPANホールディングス(TOPPAN)は2025年2月19日、体外で作製した「人工3次元肝臓組織(肝臓モデル)」の試供に向け、フェニックスバイオと業務提携契約を締結した。
この肝臓モデルは、TOPPANが開発した3D細胞培養技術「invivoid」とフェニックスバイオの新鮮ヒト肝細胞「PXB-cells」を組み合わせて作製した人工組織となる。生体に近い特性を有し、肝臓に対する安全性試験を要する創薬研究や機能性食品の開発など幅広い用途での活用が期待される。
3次元構造を保持しつつ培養容器に接着させているため、組織が浮遊せず、従来の二次元培養と同様に簡便に培地交換できる。組織厚を50〜100μm程度に制御すれば、生きた状態で組織内部の構造を鮮明に観察可能だ。
さまざまな化合物を代謝する酵素の遺伝子発現が高く維持されており、代謝物を排出する毛細胆管構造も生体に近い特徴を有している。これらの機能や特徴は、少なくとも30日間は減衰せず、保たれることを確認している。
また、肝臓に対する毒性評価も高感度かつ安定に実施できる。胆汁うっ滞毒性に関連する一部の化合物の肝毒性評価を実施したところ、既存の培養技術であるスフェロイド培養と比較して20倍以上高い感度で毒性を捉えられた。
試供内容は、肝臓モデルと血管肝臓モデルの2種を予定している。試供先は医療や創薬の研究機関で業務に従事する人を対象とし、研究用途に限定して提供する。
invivoidはTOPPANホールディングスと大阪大学が共同開発した技術で、がん個別化医療、創薬研究、培養肉などに向けた研究が進められている。
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