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環境負荷が大きい有機溶媒をほぼ使わずに有機リチウム試薬の合成に成功:研究開発の最前線
北海道大学は、環境負荷の大きい有機溶媒をほぼ使わずに、有機リチウム試薬を合成することに成功した。粉砕機の1種となるボールミルを活用したメカノケミカル法により、従来法よりも実験操作を簡便化した。
北海道大学は2025年2月26日、環境負荷の大きい有機溶媒をほぼ使わずに、有機リチウム試薬を合成することに成功したと発表した。粉砕機の1種となるボールミルを活用したメカノケミカル法により、従来法よりも実験操作を簡便化した。
研究グループが開発したメカノケミカル法では、有機ハロゲン化物とバルク状の金属を反応させることで、空気下で簡易に有機金属種を合成できる。加えて、既存の手法よりも毒性の高い溶媒使用量を削減できることから、これを応用して省溶媒かつ簡便な有機リチウム試薬の合成を検討した。
その結果、ボールミルを使うことで、極めて少量の液体添加剤の存在下で有機ハロゲン化物と金属リチウムの反応が進み、空気下かつ室温で有機リチウム試薬を調製できた。この有機リチウム試薬は、空気下でさまざまな有機合成反応に活用できることも分かった。また、溶液系の従来法では、反応性が低く出発原料として用いるのが困難な難溶性有機ハロゲン化物や有機フッ化物も、同手法では有機リチウム試薬前駆体として利用できる。
有機リチウム試薬は、その反応性の高さから、有機合成で広く利用されている。今回の研究で、有機溶媒の使用を大幅に削減し、かつ実験操作が簡便になったことで、環境調和型の新しい物質生産プロセスの開発が期待される。
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