道内の航空路線で旅客機による赤潮モニタリングを開始:モビリティサービス
北海道大学と日本航空は、2025年夏より北海道エアシステムの航空機1機に観測用カメラを設置し、定期便航空機を用いた赤潮モニタリングを開始する。赤潮による水産業への被害防止に貢献する。
北海道大学と日本航空は2024年11月12日、北海道エアシステム(HAC)の航空機1機に観測用カメラを設置し、定期便航空機を用いた赤潮モニタリングを2025年夏より開始すると発表した。「世界初」(日本航空)の取り組みだという。
この取り組みは、北海道における各種社会課題の解決を目指し、持続可能な社会創りをリードするために両者で2022年6月に締結した連携協定の一環となる。水産業への被害防止に貢献するとともに、将来的には赤潮のみならず森林や海洋の環境モニタリングへの応用も検討する。
HACのATR42−600型機(機体番号:JA13HC)の機体後方下部の胴体パネル上に、観測用のマルチスペクトルカメラ3台を設置し、定期航空便から観測を行う。モニタリングの対象路線は、札幌(丘珠)−函館、函館−奥尻、札幌(丘珠)−利尻で、対象海域は函館湾、噴火湾、奥尻海峡、利尻水道を計画している。まずは函館湾を対象にモニタリングを開始する予定。
撮影された画像は北海道大学に転送され、同大学が開発した赤潮検出手法を活用して、その分布を可視化する。モニタリング開始後は、実証を重ねながら赤潮の検知精度の向上を目指すとともに、水産関係者への情報伝達方法を検討していく。
赤潮は、海中の植物プランクトンの異常増殖により海水が赤褐色に変化する現象で、魚介類が窒息死してしまうことから水産業に大きな被害をもたらす。地球温暖化に伴い赤潮の発生が増加し、特に北海道では2021年に97億円以上の被害があった。このため、赤潮のモニタリングにより早期に検知し、被害を未然防止することが求められている。早期検知には高頻度かつ広範囲の観測が必要なため、定期便航空機は同じ飛行経路を何度も運航することから、赤潮モニタリングへの有効活用が期待されている。
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