GAIA-Xが目指す自律分散型データ共有、“灯台”プロジェクトは協調から競争領域へ:加速するデータ共有圏と日本へのインパクト(4)(1/5 ページ)
欧州を中心にデータ共有圏の動向や日本へのインパクトについて解説する本連載。第4回は、第3回で取り上げたIDSAと並んで業界共通での仕組み作りを担うGAIA-Xを紹介する。
連載概要と本記事の位置付け
本連載では、「加速するデータ共有圏:Catena-XやManufacturing-Xなどの最新動向と日本への産業へのインパクト」をテーマとして、IDSA(International Data Space Association)、GAIA-X、Catena-X、Manufacturing-Xなどの鍵となる取り組みを解説していく。連載第4回となる今回は、GAIA-Xを紹介する。
本連載の構成
- 第1回:製造業の「データ共有圏」、2023年の最新動向と5つのポイント
- 第2回:製造業でデータ共有圏が広がる背景と、データ共有のインパクト
- 第3回:データ主権を守りながら共有していく、IDSAとは?
- 【今回】第4回:クラウドでの分散型共有を図るGAIA-Xとは?
- 第5回:自動車でのデータ共有圏:Catena-X、Cofinity-Xとは?
- 第6回:製造業におけるデータ共有圏:Manufacturing-Xとは?
- 第7回:米国(MOBI)や中国(Huaweiなど)、アジアでの取り組み
- 第8回:日本におけるデータ共有の取り組み(1):DATA-EX、IVI、RRI
- 第9回:日本におけるデータ共有の取り組み(2):Ouranos Ecosystem
- 第10回:求められる日本のデータ共有圏戦略
データ共有圏(データスペース)とは
データ共有圏はデータスペース(Data Space)とも呼ばれている。データの共有/交換は、従来はプラットフォームを介したデータ共有が一般的であり、提供されたデータの活用やマネタイズについてはプラットフォーム側が実施し、データ所有者は関与できないものだった。
一方で、現在欧州発で検討が進むデータ共有圏=データスペースについては、データの出し手と受け手をコネクターで直接つなぐ分散型の共有となる。コネクターを活用し、データ所有者と利用者が直接データ共有を実施する。データ主権が担保され、データ所有者が「他者がデータをどのように、いつ、いくらで利用できるかを自己決定することができる」のが特徴だ。
データ共有圏を展開するさまざまな組織に対するGAIA-Xの位置付け
データ共有圏では多くの組織が動いている。本連載の中で、それぞれの組織の動向は詳述していくが、ここでは大きくその位置付けを示したい。まず、主要な組織としては大きく2つに分かれる。業界共通での仕組み作りを担うのが、連載第3回で紹介したIDSA(International Data Space Association)と、今回紹介するGAIA-Xだ。
この業界共通の仕組みを土台として、その上に自動車業界ではCatena-X、製造業全般ではManufacturing-Xなど、業界ごとの仕組みづくりを担う組織の活動が位置付けられる。ただし。後述するCofinity-Xは位置付けが他と異なり、Catena-Xの仕組みの上で個別のソリューションを展開するサービス企業となる。その中で、本記事で詳述するのがGAIA-Xだ。
GAIA-Xの活動
GAIA-Xは、2019年にドイツ/フランス政府によって発表され、欧州はじめグローバルに拡大しており、Federation Service(中央サーバを通さない分散型データ共有)を導入することで、複数の企業や業界にまたがるデータの流通を仲介することを図る。活動としてはIDSAと共通する部分も多いが、クラウドでのFederation Serviceに基づく大規模な分散共有に主眼を置いている点が特徴だ。現在300以上のメンバーを有する。欧州をはじめ世界中の国にハブを拡大しており、欧州の他では韓国、日本(データ社会推進協議会:DSA)、米国にハブを構える。
航空宇宙、農業、観光、教育、エネルギー、金融、地理情報、健康、製造、メディア、モビリティ、公共部門、スマートシティー、スマートリビング、建設、物流など幅広い業界におけるデータ共有の推進を図っている。
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