製造業の「データ共有圏」、2023年の最新動向と5つのポイント:加速するデータ共有圏と日本へのインパクト(1)(1/3 ページ)
本連載では、「加速するデータ共有圏(Data space):Catena-XやManufacturing-Xなどの最新動向と日本への産業へのインパクト」をテーマとして、データ共有圏の動向やインパクト、IDSA、GAIA-X、Catena-X、Manufacturing-Xなどの鍵となる取り組みを解説していく。
はじめに
2023年4月のハノーバーメッセ2023ではGAIA-X、Catena-X(カテナX)などに代表されるデータ共有圏(Data space)に関して大きな発表があった。ポイントは下記の通りだ。
- Catena-Xと、そのサービス事業者であるCofinity-Xの本格始動
- Manufacturing-Xの本格始動
- Uranos-XやEuProGigantなど着々と進むデータ共有圏ユースケース
- データ共有圏の土台となるDigital Product PassportやAsset Administration Shell
- データ共有圏が実装された商材の展開
多くのセッションや発表されたソリューションにおいてGAIA-XやCatena-X、Manufacturing-Xなどに言及されており、ドイツ発/欧州発の製造業のデジタル化の動向がデータ共有圏を前提に置いたものへと変化しつつあることが分かる。
本連載では、「加速するデータ共有圏(Data space):Catena-XやManufacturing-Xなどの最新動向と日本への産業へのインパクト」をテーマとして、拙著「メタ産業革命〜メタバース×デジタルツインがビジネスを変える〜」(日経BP/2022年10月20日出版)の内容にも触れながら、データ共有圏の動向やインパクト、IDSA、GAIA-X、Catena-X、Manufacturing-Xなどの鍵となる取り組みを解説していく。
- 本連載の構成
- 【今回】第1回:ハノーバーメッセ2023におけるデータ共有圏の最新動向:Catena-X/Cofinity-X/Manufacturing-X
- 第2回:データ共有圏が進む背景、データ共有のインパクト
- 第3回:データ主権を掲げるIDSA(International Data space)とは?
- 第4回:クラウドでの分散型共有を図るGAIA-Xとは?
- 第5回:自動車でのデータ共有圏:Catena-X、Cofinity-Xとは?
- 第6回:製造業におけるデータ共有圏:Manufacturing-Xとは?
- 第7回:米国(MOBI)や中国(Huaweiなど)、アジアでの取り組み
- 第8回:日本におけるデータ共有の取り組み(1):DATA-EX、IVI、RRI
- 第9回:日本におけるデータ共有の取り組み(2):Ouranos Ecosystem
- 第10回:求められる日本のデータ共有圏戦略
データ共有圏をおさらい
データ共有圏はData space(データスペース)とも呼ばれている。これまでのデータ共有や交換はプラットフォームを介しており、提供されたデータの活用やマネタイズについてはプラットフォーム側が実施するため、データ所有者は関与できなかった。一方で、現在欧州発で検討が進むデータ共有圏はコネクターと呼ばれるデータの出し手と受け手を直接つなぐ分散型の共有だ。
コネクターを活用しデータ所有者と利用者が直接データ共有を実施し、データ主権が担保され、データ所有者が「データを他者がどのように、いつ、いくらで利用できるかを自己決定できる」という点がデータ共有圏の特徴だ。
あらゆる産業で生まれるユースケース
データ共有圏の取り組みはあらゆる産業に広がっている。後述する自動車など製造業のみならず、建設、航空/宇宙、医療、スマートシティー、物流、教育、海洋、農業などあらゆる産業に拡大してきている。直近では生成AI(Generative AI)の流れを踏まえて、データ共有を通じて欧州発で大規模AI言語モデルを開発するための「Open-GPTデータスペース」などの取り組みも始まっている。
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