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製造業の「データ共有圏」、2023年の最新動向と5つのポイント加速するデータ共有圏と日本へのインパクト(1)(2/3 ページ)

本連載では、「加速するデータ共有圏(Data space):Catena-XやManufacturing-Xなどの最新動向と日本への産業へのインパクト」をテーマとして、データ共有圏の動向やインパクト、IDSA、GAIA-X、Catena-X、Manufacturing-Xなどの鍵となる取り組みを解説していく。

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各組織の位置付け

 データ共有圏では多くの組織が動いている。連載の中でそれぞれの組織の動向を詳述するが、ここではその位置付けを示したい。

 まず主要な組織としては大きく2つに分かれる。業界共通での仕組みづくりを担うのがIDSA(International Data space Association)やGAIA-Xだ。その土台の上に、自動車業界ではCatena-X、製造業全般においてはManufacturing-Xなど業界ごとの仕組みづくりを担う組織の活動がある。後述するCofinity-Xは位置付けが他と異なり、Catena-Xの仕組みの上で個別のソリューションを展開するサービス企業だ。


図:データ共有圏における各組織の位置付け(筆者作成)[クリックで拡大]

製造業における主なユースケース

 製造業におけるデータ共有の主なユースケースとしては、競争領域と協調領域に分かれる。まず、競争領域としてはデータ共有を通じて新たなビジネスモデルや収益源を生み出す「新規サービスやビジネスモデル創出」、サプライチェーン企業との設計や生産などでの密接な連携を通じてオペレーションの効率性や品質を向上させる「オペレーション高度化」などが挙げられる。

 協調領域としては、災害時の他、半導体不足やウクライナ危機のような有事の際にデータ共有を通じてサプライチェーンの安定性を担保する「有事サプライチェーン対応」、後述するバッテリーを含むDigital Product Passportなどの規制対応、サーキュラーエコノミーの実現などの環境対応などの「規制環境対応」に分かれる。

 競争領域部分は、今まで製造業のデジタル化の文脈で議論されてきた方向性を、よりコネクター型のデータ共有圏を通じて加速化させる動きであり、協調領域部分は社会環境の変化に対応した動きであることが分かる。現在は、データ共有の喫緊性や必要性の高い規制対応や有事サプライチェーン対応の協調領域が中心として議論されているが、今後はいかに競争領域に踏み込んだユースケースが加速するかがカギになる。


図:製造業における主なユースケース(筆者作成)[クリックで拡大]

ハノーバーメッセ2023における5つのポイント

 ここまでデータ共有圏の概要を振り返ったが、ここから本題であるハノーバーメッセ2023における最新の発表内容に触れたい。

(1)Catena-Xと、そのサービス事業者であるCofinity-Xの本格始動

 Catena-Xのβ版のリリースとCofinity-Xの始動の発表はハノーバーメッセ2023におけるポイントの1つだ。先述の通り、Catena-Xは自動車業界におけるデータ共有の取り組みを進める組織だ。欧州のプレイヤーとともに、日系企業からはデンソー、NTTコミュニケーションズ、旭化成、DMG森精機の欧州子会社ISTOSが、米国プレイヤーとしてはフォード、グーグル、マイクロソフト、アマゾン(AWS)、IBMが、中国からはHuaweiなどが参画している。


図:Catena-Xの参画組織[クリックで拡大] 出所:Catena-X

 そしてCatena-Xの実サービス運用会社であるCofinity-Xについての本格的な発表があった。Catena-Xは標準や仕組みを作る非営利組織であるのに対して、Cofinity-Xは実ビジネスを行う。アプリケーションのマーケットプレースとともにアプリケーションも提供する。

 ちなみに、Cofinity-XはBASFやBMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、SAP、シーメンスをはじめとする10社の共同出資会社として設立された。Cofinity-X自体がアプリケーションを提供するケースもあれば、SAPやシーメンスなどのソリューション企業がアプリケーションを提供するケースも存在する。2023年8月ごろに実アプリケーションの提供が開始される見通しだ。


図:Cofinity-Xの概要と展開アプリケーション(筆者作成)[クリックで拡大]

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