自動車業界10社の合弁会社「Cofinity-X」、Catena-Xの普及を促進:ハノーバーメッセ2023
自動車業界の10社が設立した共同出資会社Cofinity-Xが、世界最大級の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)」に出展。「Catena-X」の普及を促進する同社サービスのユースケースを紹介している。
ドイツのSAPやSiemensの他、BMW GroupやMercedes-Benzなど自動車業界を中心とした計10社が設立した共同出資会社Cofinity-Xが、世界最大級の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)」(2023年4月17〜21日)に出展。自動車業界全体でデータ交換標準を規定する「Catena-X」の普及を促進する同社サービスのユースケースを紹介している。
Cofinity-Xは、2023年2月、自動車業界でのCatena-Xの普及促進のため、BASFやBMW Group、Henkel、Mercedes-Benz、SAP、Schaeffler、Siemens、T-Systems、Volkswagen、ZF Friedrichshafenの計10社によって設立されたジョイントベンチャー。自動車バリューチェーン全体でデータを安全にやりとりするための製品/サービスの提供を目的としている。同社のオペレーションの基礎になっているのがCatena-Xおよび「GAIA-X」の原則で、「オープン性、信頼性、協調性、かつ安全性の高い環境で、データ共有者は完全なデータ主権を確保できる」(SAP)という。
同社はまず欧州市場を対象に、アプリケーション用のオープンマーケットプレースの運営および、エコシステム内の参加者間の効率的かつ安全なデータ交換を可能にする製品とサービスの提供を進めていく方針で、2023年4月14日には、Cofinity-Xマーケットプレースで最初のコアサービスおよびビジネスアプリケーションの運用を開始したと発表。「最初の顧客である自動車業界の大企業や中堅企業は、Cofinity-Xの支援を受け、Catena-X標準に準拠した安全なデータ交換を開始している」としている。なお、Cofinity-Xの本格的な市場投入は、2023年9月を予定しているという。
コアサービスの初期の基本的な構成要素としては、参加者の正当性を保証する「DAPS(Dynamic Attribute Provisioning Service)」、デジタルツインのメタデータを管理/検索する「デジタルツインレジストリ(DTR)」「自己記述(SD)ファクトリー」などが挙げられている。
Cofinity-Xの、製品/サービスの詳細は下記の通りだ。
- Catena-Xエコシステムへの登録と認証:迅速かつ簡単に実行可能
- マーケットプレース:顧客が導入できるビジネスアプリケーションにとって最適な環境を構築し、ネットワーク参加者の効率的な「マッチメイキング」を可能にする。提供されるアプリケーションは全て、Catena-XおよびGAIA-Xのデータ交換原則に準拠する
- データ交換:当事者間のデータ交換は、データ主権が確保された安全かつ標準化された原則に基づくもので、特定ソリューションへのロックイン効果を強いることはない。全てのパートナーが、自身のデータの完全制御権を持つ
- コアサービス:マーケットプレースで提供されるビジネスアプリケーションをサポートし、各顧客に付加価値を提供する相互運用可能なオープンソースアプローチでのデータ交換を可能にする
- CO2削減目標:プロダクトカーボンフットプリントアプリケーションは、バリューチェーン全体におけるCO2値の正確な計算と集計を可能にする。これによって、Cofinity-Xの顧客は、CO2排出量の可視化の分野で先行し、持続可能性の観点から具体的な改善策を導き出すことができる
Cofinity-Xのマネージングディレクター、トーマス・レッシュ(Thomas Roesch)氏は「Cofinity-Xのベータ版の開始によって、顧客が持続可能性とカーボンニュートラルに積極的に取り組めるよう、真にオープンで安全かつ相互運用可能な最初の製品/サービスポートフォリオに向けた大きな一歩を踏み出すことになる」とコメントしている
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