ポリカーボネートと同等の耐熱温度を持つアクリルを開発:材料技術
クラレは「新機能性材料展2025」に出展し、開発品として特殊高耐熱アクリル樹脂「Kuralpha(クラルファ) AX」と高耐薬品性の透明エンジニアリングプラスチックを披露した。
クラレは「新機能性材料展2025」(2025年1月29〜31日、東京ビッグサイト)に出展し、開発品として特殊高耐熱アクリル樹脂「Kuralpha(クラルファ) AX」と高耐薬品性の透明エンジニアリングプラスチックを披露した。
曲げ弾性率が4000メガパスカル
Kuralpha AXは、ポリカーボネート樹脂に相当する耐熱温度を持つアクリル樹脂で、高い耐熱温度と耐紫外線(UV)性の両立が求められるレンズ用途などに適した材料だ。
同材料は、通常のアクリル樹脂並みに変色しにくい他、熱可塑性樹脂のため射出成形にも対応しさまざまな形状にデザインできる。曲げ弾性率が4000メガパスカル(MPa)と高い剛性を備えているため成形後も部品の形状を維持しやすいことに加え、アクリル樹脂の1種であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)とコンパウンドしても透明性を保てる。
クラレの担当者は「Kuralpha AXはアクリルを主成分とした樹脂で、アクリルの特徴である耐候性や表面硬度、光学性能を維持しつつ、ポリカーボネート樹脂に相当する耐熱温度を備えている。ガラス転移温度は140℃だ。用途としては主に一般照明や自動車のライトのレンズを想定している。ただ、今回の出展で他の用途も探っている。現在は製品化に向けて、サンプルの提供を行っている段階だ」と語った。
高耐薬品性の透明エンジニアリングプラスチックは有機フッ素化合物(PFAS)フリーで高い薬品耐性と耐摩耗性を持つ樹脂だ。独自の分子設計により透明性と耐屈曲性を両立している。
クラレの担当者は「既存のエンジニアリングプラスチックで高い耐薬品性があるものは不透明なものが多い。また、既存の透明なエンジニアリングプラスチックは耐薬品性が低いものが大半を占める。これらの課題を解決したのがこの開発品だ。用途は現在探しているところだ」と語った。
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