ブリスター発生率を低減した耐熱性ポリアミド樹脂、車載電装部品の生産性を向上:材料技術
クラレは、既存グレードに比べSMTコネクターでのブリスター発生率を低減した「ジェネスタ」の耐ブリスターグレードの開発に成功した。
クラレは2024年5月8日、車載コネクター向けにブリスター(加熱により成形品表面に生じる膨れ)発生率を低減した耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」の耐ブリスターグレードを開発したと発表した。
さまざまなULの認証も取得
ジェネスタの耐ブリスターグレードは、既存グレードに比べ、プリント基板に直接部品を搭載してはんだ付けを行う表面実装技術(SMT)向けのコネクターにおけるブリスター発生率を低減している。良好な発色性も有するため高い視認性が求められる車載コネクターに適し、ドイツの標準色票であるRALカラーをはじめとした調色品にも対応する。
さらに、印刷したはんだペーストの加熱溶融によって表面実装部品のはんだ付けを行う表面実装プロセスにおけるリフローの温度や設計の自由度も高められる他、耐ブリスター性にも優れるため車載電装部品の生産性をアップできコスト削減にも貢献する。車載以外の過酷な環境で使用される産業用途のコネクターなどでも利用できる。
なお、車載SMTコネクターに求められる強度や成形性のバランスにも優れ、米国の認証機関であるULの難燃性規格「UL94 V-0認証」をはじめ、さまざまなULの認証も取得している。
開発の背景
ジェネスタは、車載電装部品の表面実装(SMT)化の増加に伴い、強化グレード「GNシリーズ」を中心に、リフロー工程の適性を有する車載SMTコネクターへの採用を拡大してきた。同製品の従来グレードもブリスターが発生しにくいものの、自動車用コネクターは民生用コネクターに比べ大型かつ厚肉であり、SMTの条件が過酷化することからさらなる耐ブリスター性の向上が求められていた。
そこで、同社は顧客の要望に応えるべく数年間にわたり研究開発を進め、ブリスター発生の詳細なメカニズムを解明し、累計2万回を越える評価と独自の配合技術により耐ブリスターグレードを開発した。
ジェネスタについて
同社は、原料モノマーから自社開発した耐熱性ポリアミド樹脂としてジェネスタを1999年に事業化した。ジェネスタは、耐熱性、耐薬品性、低吸水性、電気絶縁性、耐摩耗性などの特徴を有す。特に、SMTコネクターでブリスターの問題が発生しにくいという特徴があり、電気/電子製品向けに採用を拡大してきた。スマートフォンやパソコンのコネクターなどの電気/電子用途、LED反射材用途に加えて、軽量化ニーズが高まる自動車分野でも冷却系部品のハウジングやギヤなどでも採用が拡大。近年は車載電装部品でも採用が進んでいる。
拡大する需要に対応し、かつグローバル供給体制を整えるため、同社は、2023年に稼働を開始したタイの新プラントでモノマーからポリマーまでの一貫生産を行っている。新プラントの稼働に伴い、グローバルで合計年間2万6000トンのポリマー供給が可能になった。
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