O-RANの推進役に、京セラがオープンな通信インフラ開発のためのアライアンス設立:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
京セラは、オープンな無線アクセスネットワーク(RAN)のインフラ環境実現に向け、けん引役となるべく積極的な働きかけを行う。新たに、AIを活用した5G仮想化基地局を開発し商用化を本格的に開始する他、O-RAN準拠の無線アクセスネットワーク機器を開発するエコシステムとして「O-RU Alliance」を設立する。
O-RU Allianceでオープンな通信インフラ環境を加速
これらの自社での取り組みに加え、業界の新たな動きを加速させるために、機器のオープン化とエコシステム化を推進するため「O-RU Alliance」を2025年3月3日に設立する。京セラとともに参画するのは、台湾のAlpha Networks、Microelectronics Technology、WNC(Wistron NeWeb Corporation)、韓国のHFR、SOLiD、インドのVVDN Technologiesの6社だ。今後、京セラのCU、DUをオープンに開放し、O-RU Allianceの参加ベンダーとともに、互換性があり、柔軟な無線アクセスネットワーク環境の普及を推進する。
O-RU Allianceを通じて、O-RAN規格に準拠したCU、DU、RUをシステムソリューションとして通信オペレーターに提供することで、オープンRANの普及を促す。これにより、各通信ベンダーの5G基地局事業への参入をしやすくするとともに、通信インフラ市場の活性化を目指すという。
堀氏は「O-RAN ALLIANCEなどで規格化なども進んでいるが、実際に機器を開発するベンダー同士が運用までを想定した検証を行えているわけではない。通信キャリアが全てを検証できるかというとそれも難しい。そのため、枠組みはあっても、オープン化を実際に進めることができない状況が生まれていた。O-RU Allianceでそのギャップを埋める。参画企業で接続して評価や信頼性を保証する。最終的にO-RU Allianceで認証するような仕組みまで持っていければよいと考えている」とO-RU Allianceの役割について説明する。
O-RU Allianceでは、具体的には、以下の3つに取り組む。
- 相互運用テスト:京セラが提供するO-RAN規格に準拠するCU(O-CU)、DU(O-DU)を参画メンバーに開放し、相互運用テストを共同で実施する
- ベースバンド部の提供:京セラが参画メンバーに、インタフェース処理部のレファレンスデザインを提供する。参画メンバーはそれを利用して、京セラのO-CU、O-DUとの相互接続性を確保できる
- 通信オペレーター企業への紹介:京セラでは、O-RAN ALLIANCEの参画メンバーを公開し、通信オペレーターに紹介する。これにより、参画メンバーが、グローバルな通信オペレーターとのビジネスチャンスを得られる一方、通信オペレーターがさまざまな通信ベンダーのO-RUを選定できるようにする
京セラでは、今後さらに、O-RU Allianceの参画メンバーの拡大を推進する。「O-RAN環境を普及させることを考えたときに、O-RU Allianceはその手段の1つだ。普及を加速するためにはもっと大きな力が必要で、O-RU Allianceそのものの拡大も進めていく他、AI-RAN時代を見据え、クラウドプラットフォーマーなどとの関係構築なども進めていきたい」と堀氏は語っている。
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