DNPがミニLED向けにLED素子の映り込みを抑える光拡散フィルムを開発:材料技術
大日本印刷は、低消費電力で鮮やかな画面を実現するミニLED(発光ダイオード)のバックライト向け光拡散フィルムを開発した。
大日本印刷(DNP)は2025年1月16日、低消費電力で鮮やかな画面を実現するミニLED(発光ダイオード)のバックライト向け光拡散フィルムを開発したと発表した。今後は、ミニLED向けに同フィルムを提供する他、拡大が見込まれるマイクロLEDなどの次世代ディスプレイに向けて同フィルムの技術の展開を目指す。
同フィルムの特徴
同フィルムは、特定の光の波長を透過/反射をする誘電体多層膜と光を屈折させる超微細なプリズム(三角の凸部分)の賦形(ふけい)で構成されている。
LEDの真上に出た光はドットの映り込みにつながるが、同フィルムの誘電体多層膜では、直線の光は透過させず、設計された入射角度の光だけを通すことで、ドットの映り込みを低減する。
同フィルムのマイクロプリズムは、LEDの光の方向を制御し、左右に光を拡散させる他、光の拡散によって明るさを均一化することで、ドットの映り込みを低減し、光の利用効率を高める。
同フィルムの厚さは50μmで、通常の拡散板と比較して約40分の1の薄さだ(DNP調べ)。これによりディスプレイの薄型化につながることに加え、製造工程が簡素化され、生産コストの低減も期待される。モバイル端末など小さな画面にも展開できる。
同フィルムの開発背景
近年、液晶や有機EL(OLED)に続く次世代ディスプレイとして、ミニLEDやマイクロLEDが注目されている。ミニLEDは、直径100〜300μmほどのLEDが高密度にパネル基盤に実装されたもので、高い輝度による鮮やかな画質と低消費電力性能が特徴だ。
これらのディスプレイは、一部のテレビやPCなどで利用が始まっており、今後小型電子デバイスにも利用が拡がるなど、世界的に市場拡大が見込まれている。一方でミニLEDは、パネル基盤に高密度に配置したLEDの素子(ドット)が、人の目では見えやすいため、拡散板や特殊な印刷パターンを活用して映り込みを減らしていた。その際、厚みのある拡散板を使用すると光の透過率が低く、消費電力量が増えるという課題もあった。こうした課題に対しDNPは今回の光拡散フィルムを開発した。
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