ニュース
データを秘匿しながらベイズ最適化の計算ができる技術を開発:マテリアルズインフォマティクス
産業技術総合研究所は、データを秘匿しながらベイズ最適化の計算ができる技術を開発し、アプリに実装した。取得したデータを分割、分散させて保管し、データを復元することなく計算に利用できる。
産業技術総合研究所は2024年12月24日、データを秘匿しながらベイズ最適化の計算ができる技術を開発し、アプリに実装したと発表した。今後、アプリの高速化やより高い安全性でデータを取り扱うシステムの構築に取り組む。
今回開発した技術では、情報漏洩のリスクが低い秘密分散技術と、データを無意味化して計算する秘匿計算技術を併用している。秘密分散は取得したデータを読み取れないように分割分散させて保管を行い、秘匿計算は途中でデータを復元せず計算の指令に従って、結果のみ伝えられる。
磁石化合物の化学組成の最適化にこの技術を適用したところ、データを秘匿しない場合に比べ計算速度は遅いものの、5分程度で1つの候補を探索できた。また、10回未満の探索で有力な候補を示すことが可能で、データを秘匿しない計算手法と同等の90%の確率で探索に成功した。
磁化が低い材料データも探索範囲を狭める効果を発揮し、ネガティブデータの共用により探索回数を減らせることも判明した。
ML(機械学習)などの技術を用いて、高速かつ効率的に材料開発を進めるには、膨大なデータが必要だ。秘匿化によりデータ所有者の権利が守られ、データの共有が進むことが期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 実生産炉でアンモニアを燃料に利用したガラス製造の実証試験に成功
AGCや大陽日酸、産業技術総合研究所、東北大学は、実生産炉でアンモニアを燃料に利用したガラス製造の実証試験に成功した。 - 押し出し加工を用いたマグネシウム合金スクラップ材のリサイクル技術を開発
マクルウは、産業技術総合研究所(産総研)マルチマテリアル研究部門 招聘(しょうへい)研究員の斎藤尚文氏、中津川勲氏と共同で、押し出し加工を利用したマグネシウム合金スクラップ材のリサイクル技術を開発した。 - リンテック、EUV露光機用ペリクルの量産体制確立に見通し立つ
リンテックグループは以前から研究/開発を進めているEUV露光機用ペリクルの量産化の見通しが立ったことを明らかにした。 - プラスチックのマテリアルリサイクル技術構築に向けた共同研究を開始
ブリヂストンらは、プラスチックの1種であるポリオレフィンのマテリアルリサイクル技術の構築に向けて共同研究を開始した。不純物が混在するため、壊れやすい再生プラスチックの強靭化を図る。 - 世界初 次世代二次電池向け正極材を活用し軽量リチウム-硫黄二次電池の試作に成功
ADEKAは、開発中の次世代二次電池向け正極材「SPAN(スパン)」と樹脂箔から構成される正極を用いた軽量二次電池「軽量Li-SPAN/樹脂箔パウチセル」の試作に、うるたまとともに世界で初めて成功した。