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押し出し加工を用いたマグネシウム合金スクラップ材のリサイクル技術を開発リサイクルニュース

マクルウは、産業技術総合研究所(産総研)マルチマテリアル研究部門 招聘(しょうへい)研究員の斎藤尚文氏、中津川勲氏と共同で、押し出し加工を利用したマグネシウム合金スクラップ材のリサイクル技術を開発した。

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 マクルウは2024年7月16日、産業技術総合研究所(産総研)マルチマテリアル研究部門 招聘(しょうへい)研究員の斎藤尚文氏、中津川勲氏と共同で、押し出し加工を利用したマグネシウム合金スクラップ材のリサイクル技術を開発したと発表した。

 押し出し加工とは、押し出し素材(ビレット)を金属容器(コンテナ)に設置し、心棒(ステム)により圧縮してダイスと呼ばれる金型から押し出し、必要とされる断面形状(パイプや棒)に加工する方法を指す。押し出し加工により作製される部材としてアルミニウムサッシが挙げられる。

酸化物の混入レベルを下げられることも判明

 国内では、つえや車いすをはじめとした福祉機器への採用などで、軽いマグネシウムへの注目が高まる中、環境負荷低減などの観点でマグネシウムのスクラップ材のリサイクル技術が求められている。

「固相リサイクル法」と「再溶解」による従来型リサイクル法
マグネシウム合金製の福祉介護機器(左)とスクラップ材(右)[クリックで拡大] 出所:マクルウ

 そこで、マクルウは、産総研との共同研究により、マグネシウム合金スクラップ材を直接押し出し加工して固化/再生する「固相リサイクル法」を活用したリサイクル技術を開発した。

 スクラップを溶解し成分規格を満足するよう新地金で希釈する再溶解法を伴わないリサイクル技術である固相リサイクル法は、マグネシウム合金の切削くずの処理方法として開発された手法だ。同手法は、押し出し加工中の塑性加工により、スクラップ材表面の酸化物を破壊し固化/接合する。金属やプラスチックなどの材料を加工する際にその材料の塑性を利用して行う塑性加工により再生材の組織を制御し、優れた強度と延性のバランスを同時に実現する手法としても注目されている。

 しかし、同手法は、状態が良くないスクラップ材を利用すると品質を制御できない。加えて、スクラップ材の品質を均一にしておかないと、再生材の特性にばらつきが生じる。

「固相リサイクル法」と「再溶解」による従来型リサイクル法
「固相リサイクル法」と「再溶解」による従来型リサイクル法[クリックで拡大] 出所:マクルウ

 こういった特性を踏まえて、両者は今回の技術を開発するに当たって、マクルウ内で発生したパイプ材を対象とした。このパイプ材は、工場内でインハウスリサイクルされたもので、組成/形状が比較的均一化されている。さらに、690トン(t)の押し出し加工設備などを用いた押し出し加工工程を準備した。

 今回の研究開発では、固相リサイクル法でパイプ材のスクラップ材を再生した場合に、機械的特性(強度、延性)や耐食性が劣化しない条件を発見した。マクルウはプロセス技術の開発を担当し、産総研は再生材の機械的特性、耐食性、微視的組織の評価を担った。

固相リサイクル法により作製した再生材の外観
固相リサイクル法により作製した再生材の外観[クリックで拡大] 出所:マクルウ
パイプ材の引張試験の結果
パイプ材の引張試験の結果[クリックで拡大] 出所:マクルウ

 そして、両者のデータをフィードバックし合い、最適なプロセス条件を導出した。今回の方法により再溶解を経ずにパイプ材として再生できることも確認している。

 なお、固相リサイクル法によりスクラップを再生する際に、スクラップ表面の酸化物が再生材に混入することが懸念されていたが、今回の研究開発では、バレル研磨などの簡易的な表面調整さえ行えば、酸化物の混入レベルを下げられることも分かった。

パイプ材の塩水浸漬試験結果
パイプ材の塩水浸漬試験結果[クリックで拡大] 出所:マクルウ

 固相リサイクル法に要するエネルギーは、新材を用いた押し出し工程とほぼ同等で、再溶解を伴うリサイクル工程と比較すると低い環境負荷でリサイクルできる。一連の研究開発により、再生材の特性を劣化させずに、かつ省エネルギーで再生できる水平リサイクルが実現可能であることも判明した。

 今後は、今回の技術を活用したリサイクル材の加工を通じて、マグネシウム合金再生材の構造材としての利用や、機能材(マグネシウム電池の電極、犠牲陽極棒など)への採用を目標とした事業展開を進める予定だ。また、リサイクル工程の効率化による規模拡大を目指していく。

今回の技術の開発背景

 マクルウは、マグネシウム合金製福祉機器を実現するためのパイプ曲げ加工などの塑性加工技術、溶接技術を開発し、これを用いてつえ、車いすフレーム、ハンドリムなどを開発してきた。

 一方で、マグネシウムパイプの加工需要増大に伴い、マグネシウムパイプ端材など処理コストが高いスクラップ材の増加が課題となっている。

 現在、マグネシウムの押し出し加工により発生したスクラップは、リサイクル工場に回収され、再溶解法によりリサイクルされている。なお、再溶解された材料には、新地金には含まれない不純物が混入する可能性がある。そのため、再生材の多くはアルミニウム合金の添加剤や鉄鋼材料の脱硫剤などとして利用されるカスケードリサイクルが行われる。再溶解に際しては、温暖化係数の高いカバーガスを用いる必要もある。

 また、マグネシウムの新地金を製造するためには、アルミニウムと同様に多くのCO2が発生することが指摘されている。新地金の95%は中国から輸入されており、マグネシウム資源を安定的に国内に供給する体制を構築するためにも、国内で再生材を循環させる必要性が指摘されている。なお、2021年の9〜10月にかけて中国における輸出規制により、マグネシウム地金の価格が一時的に約7倍まで高騰した。

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