コスモの製油所デジタルプラント化 三現主義を解消する技術とは?:素材/化学インタビュー(4/4 ページ)
コスモエネルギーグループに、製油所のデジタルプラント化の背景や特徴、導入による大きな利点、今後の展開について聞いた。
デジタルプラットフォームの大きな利点とは?
MONOist デジタルプラットフォームにおける高性能カメラとセンサーを搭載したロボットの役割は何でしょうか。
八谷氏 製油所のデジタルプラント化の究極形は、安全な運転を実現するために、人による点検に加えて、高性能カメラとセンサーを搭載したロボットによる点検、無線センサーによる異常予知/検知、高性能カメラによる作業/計器監視を行う。作業者は主に設備の部品交換を行うことになる。
高性能カメラとセンサーを搭載したロボットは、製油所に設置された各タンクの液面の測定やアナログ計器の読み取りで使う。無線センサーでは、コンプレッサーやポンプなどの回転機の動きをセンシングし異常を検知する。また、現状ガス漏えいの検知は専用の検知器を利用しているが赤外線カメラによる検知も行う予定だ。現在はAIカメラを用いた作業員の危険行動の検知について実証実験を実施している。
デジタルプラント化の大きな利点とは?
MONOist デジタルプラットフォームの導入による大きな利点は何だと思いますか。
吉井氏 現場への移動時間を削減できる点だ。これまでの製油所は「実際に現場で現物を見て、現実を認識した上で問題解決を図る」という三現主義の考え方でメンテナンスを行うのが一般的だった。
1つの設備を確認するために自転車で移動して1時間かかっていたケースもある。デジタルプラットフォームのVRはこうした業務を効率化できる。
また、製油所のメンテナンスでは「現場を知らないとスキルは上がらない」とされているが、VRにより現場やメンテナンスのイメージを新入社員が持つことでメンテナンスのスキルを通常より早く上げられる可能性がある。さらに、製油所の高所など危険なエリアをVRで確かめられるようになり、高所が苦手な従業員などが働きやすくなるだろう。
加えて、デジタルプラットフォームの導入により設備の図面などをタブレット端末で確認できるようになるため、書庫に行って図面をコピーするなどの作業も減らせる。なお、試験的に各製油所で開発途中のデジタルツインの稼働を2024年5月にスタートした。デジタルツインとCDFにより、データの一元管理や遠隔地からの現場確認ができるようになったことで、データ収集にかかっていた時間を大幅に減らせ、業務の効率化に成功している。
MONOist 今後の展開について聞かせてください。
吉井氏 製油所のデジタルプラント化の作業は2年前倒しで進んでいる。そのため、千葉製油所や堺製油所、四日市製油所におけるデジタルプラットフォームの完全実装は2025年度に完了する見込みだ。その目標の実現に向けて今後も要素技術の検証などを進めていく。
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