“首をなが〜くして”業務DXロボが設備点検、半導体工場で年内にも実運用へ:FAニュース
ugo、日立プラントサービス、日立システムズは業務DXロボットを使った工場点検作業の自動化サービスの開発をスタートする。
ugo、日立プラントサービス、日立システムズは2023年5月31日、三者の共創によって業務DX(デジタルトランスフォーメーション)ロボットを使った工場点検作業の自動化サービスの開発をスタートすることを発表。同日に東京都内で行われた記者会見で協創の概要やロボットのデモンストレーションを紹介した。
製造現場では少子高齢化の影響で熟練技術者の引退が相次ぐ中、新たな人材の獲得が難しく労働力不足や技術継承が課題となっている。一方で、生産停止リスクの低減やエネルギー使用の最適化なども求められ、高度な施設運用が必要となっている。
今回の取り組みは、現場の負担軽減と施設運用の効率化を目指し、業務DXロボットによる設備点検の自動化とともに、点検で収集したデータの分析を通した設備運用の効率化を目的としている。
具体的には、ugoが開発する自律走行と遠隔操作が可能な業務DXロボット「ugo」が工場内を巡回し、ugoに搭載された各種センサーと日立システムズが提供する「CYDEEN」のメーター自動読み取りサービスにより、工場内の温度、湿度などの環境データや計器メーターの値を自動で取得。これらのデータに日立プラントサービスが60年にわたって現場で培った大規模工場の保守ノウハウを融合させ、施設運用を効率化するソリューションを提供する。
ugoがメーターの数値やランプの点灯などに異常を検知した際は自動で通知し、作業員による巡回点検の作業負担を軽減する。ugoの不具合が発生した時には、日立システムズが持つ全国約300拠点にいる保守員が迅速にサポートする。
メーター自動読み取りサービスはデジタル、アナログを問わず読み取りが可能で、ugo本体の拡張性を生かし環境センサーを搭載することで、温度、湿度、気圧といった環境情報を収集できる。集積されたデータはグラフ化され、管理者は事務所にいながら工場内の機器の状況を把握できる。
ugo 代表取締役 CEOの松井健氏は今回の共創について「われわれは汎用的なロボットサービスとして提供しており、システムとしての提供や工場向けに求められるサービスの内容、レベルにおいてはわれわれのようなスタートアップ1社だけでは提供ができない。日立プラントサービス、日立システムズの持つ技術、ノウハウをロボットと融合させることで、工場向けサービスとして提供できるようになる」とメリットを語る。
デモでは、180cmの高さまで伸長することで最適な高さで記録が可能な「ugo mini」(開発中)を使用したが、実際のシステムでは環境に応じた最適なモデルを提案するという。
2023年10月から国内の半導体工場にて実証実験を開始しており、2024年秋に同工場における実運用の開始と、2024年度中のサービスリリースを予定している。具体的な提供形態は現在、検討中という。
日立システムズ 執行役員の青木誠氏は「われわれのメーター読み取りサービスをugoと組み合わせることで、複数の計器を読み取り、数値をデータ化してレポートできるようになる。また、カメラによる計測だけでなく、ugoにさまざまなセンサーを取り付けることで、温度や湿度、振動数などのデータをクラウドでレポート化することも可能だ」と述べる。ロボットの選定に当たっては、セキュリティなどを考慮して国内製のロボットにこだわったという。
日立プラントサービス 執行役員 矢野邦彦氏は「われわれは60年にわたって培ってきた工場保守の実績と、全国に約40の工場保守に関わるサービス拠点がある。これらを生かして、このシステムを顧客のニーズに合わせた商品化や作業効率化を実現する業務DXとして仕上げてきたい。近年、労働人口の減少や労働環境の変化に伴い、労働力不足や技術継承などの問題と合わせて、環境問題の対応なども製造現場の課題となっている。これらの課題に対して、われわれ3社の強みを生かした本サービスが業務DXや情報見える化などを通じて課題解決に貢献したい」と話す。
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