「AI関連売上30%という目標は保守的だとも感じている」パナソニックHD楠見CEO:CES 2025(2/2 ページ)
パナソニック ホールディングス 代表取締役 社長執行役員 グループCEOの楠見雄規氏がCES 2025会場でMONOistなど報道陣の合同取材に応じ、「Panasonic Go」などAI関連での取り組みについて考えを述べた。
AI関連売上30%は保守的すぎる
Panasonic Goに関連する計画の厳密性については「具体的にはこれからの計画となる。従来は決まってから慎重に発表することが多かったが、今回は方針として示すことを重視した。AI関連売上30%という目標も、将来成長した全社売上を想定したものとなるため、厳密な計画が難しいという面もある。ただ、今後成長する領域を考えた場合、伸びる分野はほぼ全てAI関連技術を活用している。これらの成長領域が順調に伸びることを考えると30%という目標は保守的すぎるとも考えている。ただ、いろいろなバランスから着地点として今回は30%を目標として示した」と楠見氏は考えを述べる。
パナソニックグループの事業の中では、AI関連で伸ばしやすい事業とそうでない事業は存在する。例えば、ここ数年戦略投資を進めており力を入れるBlue Yonderについては、サプライチェーンマネジメントプラットフォームにAIエージェントを組み合わせることで、新たな価値創出に取り組んでおりAI関連売上比率で大きな位置付けを示している。一方で、パナソニック インダストリーやパナソニック エナジーなどの部品領域ではすぐに適用が難しい場合もあり、AI活用には工夫が必要だ。
その中でAI関連の売上高を伸ばすためには、各事業会社の製品やサービスに最適にAI関連の技術を組み込んでいくためにどうするかという議論が必要になる。その点について楠見氏は「グループ横断で、ワーキンググループやタスクフォースのような組織を構築する方針だ。Cクラスのメンバーに参加してもらい、AIを軸に事業を変えていくことに取り組んでいく。まずはトップダウンで進めていく必要があると考えている」と楠見氏は述べている。
さらに、AI開発については、今回のCESで「Umi」を発表したパナソニック ホールディングス 執行役員 兼 Panasonic Well本部長の松岡陽子氏などの部隊が先行している面があるが、米国内でB2Bで大きなシェアを持つ業務用冷凍/冷蔵ショーケースのHussmannや、アビオニクス関連などでは連携してB2Bソリューションを構築しようという動きもあるという。
AIオーケストレーションや倫理性の面で差別化
今回のCESでも数多くの企業がAIを訴えており競争の激化が想定されるが、パナソニックグループがAIで勝ち抜くためのポイントについて、楠見氏は2つの点を訴える。「パナソニックグループが勝ち抜くためのポイントの1つ目は、AIオーケストレーションやAIエージェントなどを自社で開発し、そこをサービスや製品に最適な形で組み合わせていくということだ。AIオーケストレーションのやり方は出口となる製品やサービスによって変わってくるため、ノウハウをいち早く築くことで差別化ができる」(楠見氏)。
もう1つのポイントが、倫理性(ethics)の面だ。「従来のパナソニックグループが築いてきたものを考えると倫理性や信頼性は非常に重要だ。パナソニックグループが以前から顧客と築いている信頼性をAIの領域でも維持し、組み込んでいくことで差別化をしていく。顧客とのタッチポイントが非常に多いことを考えると倫理性は非常に重要だ。その観点でも、LLM(大規模言語モデル)として倫理性を重視するAnthropicと提携した」と楠見氏は述べている。
これらのAI関連への取り組みが収益性にどう結び付いていくのかという点については、役割の違いをアピールする。
「就任以降『危機感』を強調してきたが、危機感には大きく分けて2つの面がある。1つは現在の業務の甘えに対する危機感、もう1つが将来の変化に対する危機感だ。パナソニックグループとしての収益性を考えると新しい活動と収益性は2つの車輪だ。その収益性の部分は既存事業で生み出していく。現在の事業に甘えがないかを磨き上げて徹底的に収益性を高めていく。一方で新しい活動は、将来の変化に対する危機感に対応するためのもので、生成AIなどに対し未来がどう変化するのかという危機感の裏返しが今回発表したPanasonic GoやUmiだ」と楠見氏は強調している。
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