「PanasonicWELL」とは何か、軸になるのは異色のサービス「Yohana」:製造業がサービス業となる日(1/2 ページ)
パナソニックHDでファミリーコンシェルジュサービス「Yohanaメンバーシップ」を手掛ける執行役員の松岡陽子氏が、「Panasonic Green IMPACT」とともにグループ共通戦略の柱となる「PanasonicWELL」を推進する。松岡氏にこのPanasonicWELLについて聞いた。
パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)傘下で、同社の中でも異色の事業となるファミリーコンシェルジュサービス「Yohanaメンバーシップ」を展開しているのが、同社 執行役員の松岡陽子(ヨーキー松岡)氏が手掛けるYohanaである。家電をはじめハードウェアの印象が強いパナソニックグループにおいて、「忙しい家族のくらしをワンストップでサポート/解決する」サービスを月額のサブスクリプションで提供する点に加えて、その“サポート/解決”においてAI(人工知能)などの先進技術を前面に押し出すのではなく、人であるコンシェルジュが利用者に寄り添うことを最大の特徴とするなど、これまでのパナソニックの事業とは一線を画している。
2022年前半まで米国の一部地域で限定的に展開してきたYohanaメンバーシップだが、2022年9月に神奈川県で日本国内サービスを開始した後、同年10月には米国でも全米(50州+ワシントンD.C.)にサービスを広げている。さらに、2023年夏に米国の料金を月額249米ドルから129米ドルに値下げしたのに合わせて、同年9月5日には日本国内の料金も月額1万8000円から1万円に値下げするとともに、これまでの神奈川県と東京都に千葉県と埼玉県を加えてサービス提供地域を1都3県に拡大するなど、事業展開のギアを一段と上げてきている。
国内でのYohanaメンバーシップのサービス提供1周年に合わせて来日した松岡氏は2023年9月13日、東京都内でメディアの共同取材に応じ、パナソニックHDにおける新たな役割やYohanaメンバーシップの利用動向について説明した。
松岡氏はPanasonicWELL本部の本部長に
松岡氏は、2019年10月のパナソニック入社のころから「人の生活を助けたい」「家族のウェルビーイングを実現したい」という思いを表明していた。「現在の家族は日々のストレスを抱えて幸せを感じる日々を増やすことは難しくなっている。テクノロジーが大きく進化してさまざまな産業に役立てられている一方で、家族のくらしではテクノロジーがうまく浸透し切れていないもどかしさがあった」(同氏)。
Yohanaメンバーシップは、テクノロジーの活用を前面に押し出すのではなく、利用者と接するコンシェルジュの活動を支援するプラットフォームにテクノロジーを組み込む形で事業を展開することで、これまで松岡氏が感じていたもどかしさを打破する狙いがある。
2022年度末までの松岡氏の肩書は「執行役員 くらしソリューション事業本部長」だった。しかし2023年4月には、新たに「次世代事業推進本部」の本部長に就任。そして同本部は同年7月に「PanasonicWELL本部」に改称している。
組織名称となった「PanasonicWELL」は、2023年5月のパナソニックグループ戦略説明会で示した「グループの目指す姿」の中で、地球環境問題の解決を進める「Panasonic Green IMPACT」とともにグループの共通戦略の柱になっていた「一人ひとりの生涯の健康・安全・快適」を指す。これまで松岡氏が推進してきたYohanaの活動の方向性と重なるところも多い。
松岡氏は、PanasonicWELL本部のミッションとして「人々の健康と幸福を創る新しいビジネスを拡大」「家族にサービスを提供するプラットフォームを構築」「テクノロジーやソリューションを次世代が学べる機会を提供し、既存のビジネスや製品を強化」という3つの軸を打ち出した。「プラットフォームについてはパナソニック内外で広げていくためにさまざまな技術を取り込んでいく。そして、PanasonicWELLに関わるパナソニックの人材をスキルアップさせながら、既存のビジネスも強化していく」(同氏)という。
ただし、これらのミッションだけでは具体的にビジネスを拡大していくことは難しい。そこで松岡氏は、ミッション達成のためのハンティングゾーンを設定した。「顧客を引き付ける課題」「社会全体の潮流」「市場の魅力度」「自社の資産または優位性」の順番で絞り込んだ結果として導き出したハンティングゾーンが、「WELLNESS(ウェルネス)」を共通項とした「liveWELL」「learnWELL」「playWELL」「careWELL」「eatWELL」「workWELL」という6つの領域である。
ここで松岡氏が強調したのが「テクノロジーは必要だが、テクノロジーだけでは解決できない」ことだ。2023年に入ってから、ChatGPTなどで生成AIが話題になっており、Yohanaメンバーシップにも生成AIをどのように活用するのかを聞かれる機会が多くなっているという。「もちろん活用していくが1つのツールにすぎず、技術が進化していく中で移り変わっていくものだ。これまでのように家族のくらしにテクノロジーがないことは問題だが、テクノロジーを入れることが目的になっても意味がない」(同氏)。
松岡氏はIEEE(米国電気電子学会)のイベントの基調講演で、AIの活用を「Human(人)」と関わる「For Humans」「By Humans」「With Humans」という3つの軸とレスポンシブルAI(責任あるAI)に基づいて検討する必要があることを訴えている。「とにかくAIを使えばいいという考え方もよくないし、AIを知らないというのもよくない。最終的な判断は人間が行うHuman in the loopが重要だ」(同氏)という。
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