銀行の支店や施設でフィルム型ペロブスカイト太陽電池の共同実証実験を開始:研究開発の最前線
積水化学工業と三菱UFJ銀行は共同で、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の実証実験を実施する。同銀行の大井支店と三菱UFJフィナンシャル・グループの施設に同電池を設置し、発電効果や耐久性などの検証を進める。
積水化学工業(以下、積水化学)と三菱UFJ銀行は2024年12月23日、同銀行の大井支店と三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の施設にフィルム型ペロブスカイト太陽電池を設置し、共同で実証実験を実施すると発表した。発電効果や耐久性などの検証を進める。
太陽電池の開発では、屋外耐久性が最も重要とされる。積水化学は同社独自の封止、成膜、材料、プロセス技術を活用し、フィルム型ペロブスカイト太陽電池で10年相当の屋外耐久性を確認した。
また、30cm幅ロールツーロール製造プロセスを開発し、発電効率15.0%の同電池を製造した。現在、耐久性や発電効率を高めつつ、1m幅の製造技術の開発を進めている。
同銀行大井支店での実証実験は、同電池の社会的認知度向上を目的に実施する。同電池をカーテンウォールの室内側に設置して、支店入口の屋外向け掲示板用照明に給電し、耐久性や発電効果を検証する。
研修所と店舗から成るMUFGの施設「MUFGグローバルラーニングセンター」では、食堂利用者向けの電源(モバイルバッテリーなどに利用)に使用するため、施設の屋上に同電池とシリコン太陽電池を併設。耐候性と屋上の防水シート面に設置した場合の耐久性を検証する。
軽量で柔軟なフィルム型ペロブスカイト太陽電池は、これまでのシリコン系太陽電池では設置が困難だった場所にも設置可能だ。世界的に脱炭素化が求められる中、再生可能エネルギーの使用量を増やせる有望な選択肢として期待されている。
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