人工衛星の燃料再補給の実現に向けた研究テーマが「SBIR推進プログラム」に採択:CAEニュース
MQueは、NEDOの2024年度「SBIR推進プログラム(一気通貫型)フェーズ1」に係る公募に採択された。軌道上での燃料再補給技術の確立に向け、流体シミュレーションやAIによるタンク内液挙動の予測に関する技術開発を行い、液体燃料タンクのデジタルツインの実現を目指す。
MQueは2024年12月24日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の「2024年度『SBIR推進プログラム(一気通貫型)フェーズ1』に係る公募」に採択されたことを発表した。
SBIR推進プログラムとは、多様化する社会課題の解決に貢献する研究開発型スタートアップなどの研究開発の促進や成果の円滑な社会実装を目的とするプログラムのことで、「SBIR」は“Small/Startup Business Innovation Research”の略称となる。一気通貫型は、経済産業省およびNEDOがフェーズ1(研究開発の初期段階)、フェーズ2(実用化開発支援)とその後の支援を一気通貫で行う。
MQueは、航空宇宙発の熱流体や気液二相流を中心とした高精度な数値流体力学(CFD)シミュレーション、物理シミュレーション高速化、3Dデザイン生成などを強みとする2023年11月創業のスタートアップだ。
今回採択された研究開発テーマは「軌道上燃料再補給船におけるAI(人工知能)による流れ場再構築に関する開発」で、微小重力環境における流体シミュレーションやAIによる流れ場再構築を用いたデジタルツインシステムの開発を事業目標に掲げる。
現在、宇宙開発の領域では、人工衛星の寿命延長などを目的とする宇宙空間での燃料再補給ビジネスの拡大が期待されている。その一方で、軌道上での燃料再補給を実現するには、表面張力が卓越する微小重力環境での燃料タンク内の液体挙動を経験的に把握することが難しいといった課題が存在する。
MQueは、軌道上での燃料再補給技術の実現に向けて、流体シミュレーションやAI技術によるタンク内液挙動の予測(流れ場再構築)に関する技術開発を推進し、液体燃料タンクのデジタルツインの構築を図る。これにより、燃料補給船運用業者や人工衛星運用業者に対して、リアルタイムでの燃料タンク内現象把握を可能にし、アクティブな制御での運用リスク低減に貢献することを目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- CAEの最新動向を5つのキーワードで読み解く
連載「テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線」では、筆者が日々ウォッチしているニュースや見聞きした話題、企業リリース、実体験などを基に、コラム形式でデジタルモノづくりの魅力や可能性を発信していきます。連載第8回は「CAEの最新動向」について取り上げます。 - CAE顧客向けに物理デジタルツイン構築を支援する「NVIDIA Omniverse Blueprint」
NVIDIAは、産業用ソフトウェア開発企業がCAE顧客向けにリアルタイムのインタラクティブ性を備えたデジタルツイン作成を支援する「NVIDIA Omniverse Blueprint」を発表した。既に主要なCAEベンダーなどが採用および導入検討を進めている。 - eVTOLの気流や騒音を最適化する流体力学シミュレーションを導入
Embraerがダッソー・システムズの流体シミュレーションソフト「SIMULIA PowerFLOW」を導入し、Eve Air Mobilityが開発を進めるeVTOLのシミュレーションや分析、テストなどを実施している。 - 流体解析の結果、どう見ればよいのか?
流体解析をテーマに、入門者や初学者でも分かりやすくをモットーに、その基礎を詳しく解説する連載。今回は“流体解析の結果をどのように確認すべきか”をテーマに、流体解析におけるポスト処理について取り上げる。 - AIソリューションを拡大したマルチフィジックス解析ソフトの最新版を販売
サイバネットシステムは、マルチフィジックス解析ソフトウェアの最新版「Ansys 2024 R1」の販売と技術サポートを開始した。バージョンアップにより、AI対応ソリューションが拡大している。 - 熱流体シミュレーションを高速化するAIアルゴリズムがDTSU事業に採択
RICOSの「製品デザインの自動設計につながる熱流体シミュレーションAI」がNEDOの「ディープテック・スタートアップ支援基金/ディープテック・スタートアップ支援事業」に採択された。