アストロスケールの「ADRAS-J」がデブリまで約15mの距離に接近:宇宙開発
アストロスケールは、2024年2月に開始した商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」のミッションにおいて、観測対象のデブリから約15mの距離までの接近に成功した。一定時間、相対的な距離と姿勢を維持できた。
アストロスケールは2024年12月11日、同年2月に開始した商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)」のミッションで、観測対象のデブリから約15mの距離までの接近に成功したと発表した。
運用終了後の衛星やロケット上段など、位置データの提供、姿勢制御などの協力が得られないデブリを「非協力物体」と呼ぶ。ADRAS-Jは、非協力物体に対して安全に接近し、近距離で状況を調査するために設計された。
同社は今回、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による商業デブリ除去実証とは別に、将来のミッションに備えて独自に接近を実施。デブリ後方50mから、将来的に捕獲を想定している衛星分離部の下方約15mに機体を近づけ、一定時間、相対的な距離と姿勢を維持することに成功した。民間企業がランデブーや近傍運用を通じてデブリに接近した中では、世界で最も近い距離だという。
接近時は、ADRAS-Jに搭載したセンサーでデブリの3D形状を測定。その動きをリアルタイムに観測し、デブリの動きを予測しながら、自身の軌道や姿勢を制御しつつ段階的に距離を縮めた。また接近後は、デブリから安全距離まで自律的に退避しており、極近距離での運用中でも安全を確保できることを確認した。
この取り組みにより、デブリの捕獲や軌道離脱を行うADRAS-J2のミッションに向けたデータを収集できた。また、今後の軌道上サービスの提供に向けた実績になるとしている。
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