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アストロスケールがJAXAから「ADRAS-J2」を受注、大型デブリの捕獲と除去へ宇宙開発(1/2 ページ)

アストロスケールホールディングスが事業の概況について説明。JAXAとの間で、商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズIIに当たるミッション「ADRAS-J2」に関する契約を120億円で受注するとともに、ADRAS-J2を含めた2024年4月末の受注残高が前年同時期と比べて5.8倍となる285億円に達したことを明らかにした。

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 アストロスケールホールディングス(アストロスケールHD)は2024年8月19日、オンラインで会見を開き、同社事業の概況について説明した。JAXA(宇宙航空研究開発機構)との間で、商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズIIに当たるミッション「ADRAS-J2」に関する契約を120億円で受注するとともに、ADRAS-J2を含めた2024年4月末の受注残高が前年同期比で5.8倍となる285億円に達したことを明らかにした。

 アストロスケールHDは、衛星データ利用が活発化する中で加速度的に増加するスペースデブリの除去をはじめ、既存衛星の寿命延長につながる燃料補給などの軌道上サービスを提供する企業である。特に、通信用を中心とする衛星コンステレーションの打ち上げが増えることで高度400〜2000kmの低軌道におけるデブリとの衝突リスクは増大している。例えば、米国SpaceXが展開する「Starlink」の衛星による衝突回避マヌーバーの回数は、2023年下半期の10.8分に1回から、2024年上期には5.3分に1回になっており、今後も増え続けていくことが確実視されている。

宇宙での活動はデブリとの衝突によるリスクが加速度的に増大している
宇宙での活動はデブリとの衝突によるリスクが加速度的に増大している[クリックで拡大] 出所:アストロスケールHD

 アストロスケールHD 代表取締役兼CEOの岡田光信氏は「今、宇宙はリスクが増えてリターンが減っている。この喫緊の課題を解決しなければ宇宙はごみだらけになり、物理的に持続利用不可能になる。地上では当たり前に存在する保守、メンテナンス、廃棄といったアフターサービスやサポートが、使い捨て文化の宇宙では存在しなかった。これを埋めるために作ったのが当社の軌道上サービスだ」と語る。

軌道上サービスで宇宙における保守、メンテナンス、廃棄を可能にする
軌道上サービスで宇宙における保守、メンテナンス、廃棄を可能にする[クリックで拡大] 出所:アストロスケールHD

 軌道上サービスを実現する上での基盤となるのが、非協力物体に対するRPO(Rendezvous and Proximity Operations:ランデブー/近傍運用)技術である。アストロスケールHDは2021年3月打ち上げの「ELSA-d」でRPO技術を世界で初めて実証した後、2024年2月打ち上げの「ADRAS-J」でも軌道上ロケット上段部へのランデブー、接近、状況把握に成功している。「当社はRPO技術を世界で唯一実証している企業だ」(岡田氏)。

軌道上サービスの基盤となるRPO技術
軌道上サービスの基盤となるRPO技術[クリックで拡大] 出所:アストロスケールHD

 ADRAS-Jについては、打ち上げから絶対航法と相対航法によるロケット上段部への接近、可視光カメラでの撮影、定点観測、周回観測などで計画通りの運用を実現している。

「ADRAS-J」の運用成果
「ADRAS-J」の運用成果[クリックで拡大] 出所:アストロスケールHD
「ADRAS-J」による「周回観測」の連続画像[クリックで再生] 出所:JAXA

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