アストロスケールがJAXAから「ADRAS-J2」を受注、大型デブリの捕獲と除去へ:宇宙開発(2/2 ページ)
アストロスケールホールディングスが事業の概況について説明。JAXAとの間で、商業デブリ除去実証(CRD2)フェーズIIに当たるミッション「ADRAS-J2」に関する契約を120億円で受注するとともに、ADRAS-J2を含めた2024年4月末の受注残高が前年同時期と比べて5.8倍となる285億円に達したことを明らかにした。
2026年4月期には営業利益でブレークイーブンを目指す
アストロスケールHDの受注残高は大きく伸長している。2022年4月末の15億9000万円から、2023年4月末には約3倍の49億3700万円に、そして2024年4月末には約18倍の285億500万円となっている。また、顧客が費用の全額を負担する全額拠出案件比率も、2022年4月末の0%から2024年4月期末には81%まで拡大している。
各国政府機関からの需要が中心となる受注案件のパイプラインでは、2024年7月に英国プロジェクトとなる「ELSA-M」のフェーズ4(3億2600万ユーロ)を締結しており、同年8月20日には冒頭で紹介したADRAS-J2の契約をJAXAと締結することが決まっている。ADRAS-Jによって状況の把握を進めているロケット上段部の捕獲と除去までを行うADRAS-J2は、120億円という同社にとって最大の受注金額だけでなく、RPO技術に基づきスペースデブリ除去までを完遂するという意味で非常に大きな意味を持つことになりそうだ。
これらの受注案件のパイプラインを基に、売上高に当たるプロジェクト収益は2025年4月期に前年度比3.7倍の180億円を見込んでおり、2026年4月期には倍増となる360億円を目指すことになる。利益面でも、2025年4月期に売上総利益で、2026年4月期には営業利益で損益分岐(ブレークイーブン)に近い水準を目指すとしている。長期的な利益率目標は、売上総利益率が30%台半ば、営業利益率が20%台半ばとなっている。
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