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ミドリムシ由来の多糖から、高い接着力と易解体性を兼ね備えた接着剤を開発:研究開発の最前線
産業技術総合研究所は旭化成と共同で、ミドリムシ由来の多糖から、高い接着強度と易解体性を兼ね備えた接着剤を開発した。エポキシ系構造材用接着剤と同等の接着力を発揮しながら、加熱により容易に解体できる。
産業技術総合研究所(産総研)は2024年12月3日、旭化成との共同研究で、ミドリムシ由来の多糖から、高い接着強度と易解体性を兼ね備えた接着剤を開発したと発表した。石油由来のエポキシ系構造材用接着剤と同等の接着力を発揮しながら、加熱により容易に解体できる。
産総研はこれまで、高密度かつ酸性条件下でも培養が可能なミドリムシに着目し、細胞内に蓄積するパラミロンを原料としたバイオベース材料の開発に取り組んできた。今回の研究では、パラミロンに脂肪酸を付加し、粉末状のパラミロンエステルを合成。この粉末を熱プレスして厚さ0.05mmの透明フィルム状の接着剤を作製した。
開発したフィルム状接着剤は、加熱冷却プロセスを経て、高い接着力を発揮する。2枚のアルミニウム合金(A6061)製の板をつないだ試験片の引張試験では、30MPaの引張せん断強度を示し、自動車構造材用接着剤として使用できる接着強度が確認された。
また、再加熱をすると容易に解体でき、複数回の接着解体プロセスを繰り返しても、接着力を維持することが明らかとなった。
欧州では、廃自動車(ELV:End of Life Vehicle)のリサイクルを推進するELV指令が発令され、解体や分別をしやすい車両設計が求められている。エポキシ系接着剤などの従来の接着剤は、接着力は高いものの解体が困難で、材料の再利用や再生利用の妨げとなっていた。
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