高伸縮耐久性の変成シリコーンポリマーを開発、弾性接着剤の原料となる新素材：材料技術

産業技術総合研究所は、伸縮耐久性を高めた変成シリコーンポリマーを開発した。原料に用いることで、振動エネルギーを吸収し、伸縮疲労にも耐え得る弾性接着剤の製造が可能になる。

[MONOist]

　産業技術総合研究所（産総研）は2024年3月15日、AGCとの共同研究で、伸縮耐久性を高めた変成シリコーンポリマーを開発したと発表した。原料に用いることで、振動エネルギーを吸収し、伸縮疲労にも耐え得る弾性接着剤の製造が可能になる。

シリル化触媒開発により高機能接着剤の開発に貢献［クリックで拡大］ 出所：産業技術総合研究所

　変成シリコーンポリマーは、末端にアリル基を持つポリオキシアルキレン重合体のヒドロシランで生じるシリル化反応により合成される。現在は、工業用白金触媒を用いて変成シリコーンを生成しているが、シリル基（Si）の導入率が85％未満となり、モジュラス性能が低下するという課題があった。

　今回の研究では、シリル化反応の触媒として、炭素-炭素不飽和結合を有するカルボン酸化合物と工業用白金触媒の混合物を使用。これにより、ポリオキシアルキレン重合体の末端のシリル化率を95％以上に高め、触媒の使用量を原料の5ppmまで抑えることができる。

ポリオキシアルキレン重合体のシリル化反応と接着剤［クリックで拡大］ 出所：産業技術総合研究所

　この反応で合成した変成シリコーンポリマーを引張試験で評価したところ、未架橋体や構造欠陥の少ない架橋体を形成できるため、50％伸長させた時のモジュラス性能が30％向上した。強い振動を受けても破断せずに形状を保持でき、弾性接着剤の高機能化、高耐久化への寄与が期待される。

硬化物の引張試験によるモジュラス性能評価 出所：産業技術総合研究所

　主な用途として、建築材や車両材料向けの接着剤、シーリング材での利用を見込む。AGCがサンプルワークを開始し、数年以内の製品化を目指して量産技術の確立を図るとしている。

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