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【総まとめ】CAEと疲労強度計算について振り返るCAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる(19)(4/4 ページ)

金属疲労を起こした際にかかる対策コストは膨大なものになる。連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」では、CAEを正しく使いこなし、その解析結果から疲労破壊の有無を予測するアプローチを解説する。最終回となる連載第19回では、連載の総まとめとしてこれまでの内容を振り返る。

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理系が腑に落ちないので証明してみた。

 機械工学科は理系に入れてもらえるのでしょうか? 最後は、ボルトの疲労破断の有無の予測法を提案しました。

 ねじに関する文献には、内力係数φを使った強度計算手順が書かれていますが、これらはボルト1本構成で、かつ荷重の作用線とボルト軸が同一線上にある場合です。

 しかし、ボルト1本構成の部品はアイボルトくらいで、ほとんどのボルト締結物には複数本のボルトが使われており、荷重の作用線とボルト軸は一致しません。ボルトには偏心荷重が作用することになります。偏心荷重作用時は、ボルト1本構成から導かれた内力係数を用いた応力振幅よりも、はるかに大きな応力振幅が作用することを述べました。

 そして、ボルト疲労破断の有無の予測に「図6のような開口が発生しなければボルトは疲労破断しない」ことを証明しようとしたのですが、反例が見つかり証明に失敗しました。しかし、この反例は特殊なもので、ほとんどの場合は「開口しなければOK」ということと、フリーの有限要素法ソフト「LISA」による開口あり/なしの判定方法を提案しました。

ボルト2本構成の荷重時の変形図
図6 ボルト2本構成の荷重時の変形図[クリックで拡大]

 ボルト1本構成で、被締結体に印加できる繰り返し荷重(ボルトが疲労破断しないような荷重)をWとすると、ボルト2本構成の被締結体に作用させることができる荷重は「2×W」よりもはるかに小さくなり、ボルト10本でも同様に「10×W」よりもはるかに小さくなります。このことをぜひ覚えておいていただければと思います。

おわりです。

 3D CADが普及し、容易にCAE解析ができるようになりました。CAE解析による応力値は応力集中を含んだ値です。一方、材料力学に従って求めた応力は、応力集中を含まない値です。この2つの応力を同じ基準(例えば、アンウィンの安全率)で評価してよいのでしょうか。片方が過剰品質になりますよね。

 また、CAE解析ユーザーは、ソフトの操作法については熟知されていますが、解析結果の見方などに関する知識を補完しておく必要があると思います。このような理由から本連載を執筆しました。

 これで、連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」は終了となります。ここまで読んでいただきありがとうございました。現在、熱解析と熱流体解析に関する企画を検討しています。解析は理論解析とシミュレーションの両方を書こうと準備しております。ヒートシンクの設計や水冷却コイルの冷却系の設計ができることを目標とします。ぜひ次回連載もご期待ください!

 ちなみに、今回お届けした最終回の各見出しは、連載第1回と同様に、人気アニメの題名を少し変えたものにしてあります(お気付きでしたか?)。見出しをそまま検索していただければ元ネタが見つかるかと思います。気になる方は、第1回の見出しと併せて確認してみてください。それではまたお会いしましょう。 (連載完)

⇒「連載バックナンバー」はこちら

Profile

高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表

1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。

構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ


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