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疲労解析に挑戦、強度設計における繰り返し荷重を評価する実例で学ぶステップアップ設計者CAE(9)(1/4 ページ)

初心者を対象に、ステップアップで「設計者CAE」の実践的なアプローチを学ぶ連載。詳細設計過程における解析事例を題材に、その解析内容と解析結果をどう判断し、設計パラメータに反映するかについて、流れに沿って解説する。第9回は、強度設計において、繰り返し荷重を評価する際に用いられる「疲労解析」を取り上げる。

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1.疲労解析とは

 設計検証を行う上で、構造解析、特に強度解析が重要であることを、ここまでの連載の中で、静解析の事例を取り上げながら解説してきました。

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 あらためて、静解析について説明すると次のようになります。

静解析とは
静的荷重による解析。静的荷重とは、時間の経過にかかわらず、常に一定値を保ち続ける荷重のことです。ここでは慣性は考慮されず、荷重がずっとかかっている状態となります。

 産業機械の中には、一定間隔の時間を空けながら、繰り返し荷重がかかるような機械要素を持つものがあります。このような荷重のことを、繰り返し荷重といいます。

 強度設計を行う上で、この繰り返し荷重を評価しなければならない場合、疲労破壊の検討が必要になることがあります。このとき用いるのが「疲労解析」です。

疲労破壊とは
時間的に変動し、繰り返される荷重が機械要素(部品)にかかることで亀裂が生じ、その繰り返しにより亀裂が進み、最終的に破壊に至る現象のことをいいます。

 JIS(日本産業規格)には、「JIS Z 2273-1978 金属材料の疲れ試験方法通則(General Rules for Fatigue Testing of Metals)」があり、その中で「繰り返し104回以上の疲れ寿命を対象として室温大気圧中で行う標準試験片による金属材料の疲れ試験の方法の通則について規定する」と記されています。JISでは「疲労」のことを「疲れ」と表現しています。

 また、繰り返し数によって発生する疲労破壊は次のように分類されます。

低サイクル疲労(または塑性疲労) 繰り返し数104回程度以下
高サイクル疲労 105回程度以上
ギガサイクル疲労(超高サイクル疲労) 107回以上
表1 疲労破壊の分類

 筆者の経験では、産業用装置は5年以上使用されるものがほとんどです。そのため、この期間内の使用で疲労破壊が発生し、装置が停止してしまうような事態は絶対に避けなければなりません。

疲労破壊の特徴とは
繰り返し荷重によって、静的な破壊強度や降伏応力以下の荷重によっても破壊が生じます。

 疲労破壊の特徴が示す通り、繰り返し荷重による影響を考えると、該当する機械要素の強度設計を行う際は、静的な荷重による応力値の検証だけでは不十分で、疲労解析を行う必要があります。

2.疲労解析の適用例

 産業用装置で繰り返し荷重がかかるような機械要素には何があるでしょうか。

例:加圧機構部分

 ワーク(製品)に対して、荷重をかけるような加圧ユニットでは、次の機械要素に繰り返し荷重が作用します。

  • エアシリンダの取り付けブラケット
  • エアシリンダロッド先端に取り付けられた部品
  • エアシリンダ自体のシリンダシャフト
  • 各締結用のボルト
加圧機構を持つサブアセンブリ
図1 加圧機構を持つサブアセンブリ [クリックで拡大]

 ということで、今回はこちらを題材に解析を行っていきます。

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