尿中のマイクロRNAから早期膵臓がんを高精度に検出できる検査法を確立:医療技術ニュース
慶應義塾大学らは、尿中の細胞外小胞体を濃縮してマイクロRNAを抽出し、AIで解析する検査法を開発した。従来の血液検査よりも高精度に早期の膵臓がんを検出できる。
慶應義塾大学は2024年11月18日、尿中の細胞外小胞体を濃縮してマイクロRNAを抽出し、AI(人工知能)で解析する検査法を開発したと発表した。従来の血液検査よりも高精度に早期の膵臓がんを検出できる。北斗病院らとの共同研究による成果だ。
開発した尿中マイクロRNA検査は、尿中の細胞外小胞体を濃縮し、大量のRNAを抽出して網羅的に解析する。得られた尿中マイクロRNAデータから機械学習モデルを構築し、膵臓がんを高精度に検出できるアルゴリズムを開発した。
国内6施設の医療機関に登録された尿サンプルを用いて臨床研究を実施したところ、新開発の尿中マイクロRNA検査で膵臓がんを検出できることを確認した。尿中マイクロRNA検査の特異度は92.9%、ステージI/II Aの感度は92.9%、全体の感度は88.2%であり、早期膵臓がんでも高い感度と特異度を示す特徴が明らかとなった。
一方、従来の膵臓がんマーカーであるCA19-9の測定では、ステージI/II Aにおける感度は37.5%、全体の感度は63.6%であり、早期ステージにおける検出性能は尿中マイクロRNA検査の方が優れていた。
また、尿中マイクロRNAパターンは、がん細胞から分泌されるものだけでなく、がん細胞を取り巻く周囲の細胞を含む腫瘍微小環境からの情報も反映していることが示された。
膵臓がんは、がんが小さいうちは症状が出にくく発見が難しい。また進行が速いため、早期発見が重要となるが、現行の検査方法では早期診断が困難だった。開発した検査法は尿を用いるため、被検者への負担が少なく、自宅で容易にサンプルを採取できる。病院にアクセスしにくい地域や集団スクリーニングにおいて、膵臓がんの早期発見につながることが期待される。
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