スバルの次世代アイサイトはイメージセンサーから作り込む:自動運転技術(2/2 ページ)
SUBARUとオンセミは2020年代後半に製品化する次世代「アイサイト」での協業を発表した。
次世代アイサイトで目指すこと
スバルは2030年に死亡交通事故ゼロという目標を掲げる。この実現に向けて次世代アイサイトはステレオカメラの認識性能を一層強化する(次世代アイサイトで搭載する個々の運転支援機能については今後発表するという)。
次世代アイサイトでイメージセンサーが貢献するのは「AI(人工知能)に最適な画像取得」だ。次世代アイサイトでは、走行可能な範囲を検出して色分けする「セマンティックセグメンテーションAI」や、物体識別AIといったスバル内製のAIにより、夜間の歩行者や、ぬれて反射のある路面、遠距離の物体など難しい条件に対応して“リアルワールド”での性能を高める。また、「AIによって走行経路を今まで以上に正確に推定でき、物体の動きの予測での精度向上にもつながると考えている」(柴田氏)
これらのAIは、スバルが開発中の画像認識AI「SUBARU ASURA Net」の一部だ。ASURA Netはマルチタスクの畳み込みニューラルネットワークで、1つのバックボーンを通じて20以上の認識タスクをこなす。ASURA Netが動作するハードウェアにはAMDの「Versal AI Edge Series Gen2」が選ばれている。「リッチではない計算環境でAIを使わなければならないので、モデルをシンプル化して1つのバックボーンをさまざまな物体検知に使う形にした。ASURAは阿修羅観音に由来する」(柴田氏)。
ASURA Netに最適な画像取得をオンセミのイメージセンサーで実現する。次世代アイサイトに採用するAR0823ATは、さまざまな照明条件で鮮明かつ正確な撮像を可能にする全画素設計と、ステレオカメラの2つのセンサーが同期して撮像する制御を搭載した。
アイサイトバージョン3では1.2メガピクセル、現行システムでは2.3メガピクセルとこれまで高画素化が進んできた。次世代アイサイトでは8.3メガピクセルまで画素数を高める。
これについてオンセミ 社長兼CEOのハッサーン・エルコーリー氏は「8メガピクセルにするにあたって、イメージセンサーのサイズが大きくなり過ぎてはいけないが、画素が小さくなるので光が少なくなる。そこでインパクトを与えるのがハイダイナミックレンジ(HDR)だ。オンセミでは、競争力のあるピクセルサイズとハイダイナミックレンジを両立した。これによってアイサイトが最大限の情報を捕捉できるようにした。遠くにいる歩行者も捉えられる」と説明した。
また、次世代アイサイトに採用するAR0823ATは自動車の機能安全規格ISO 26262の安全要求レベルで2番目に厳しいASIL(Automotive Safety Integrity Level) Cに対応。センサーの機能を積極的に監視し、システムの精度を損なう可能性のある問題を検出するとカメラをリセットしたり、ドライバーに警告したりすることができる。ASIL Cにはアイサイトバージョン4でも対応している。
ステレオカメラで撮影した映像は、ピクセル単位で点群化している。3次元で立体的に物体の存在を捉える。それらの距離や速度を基に車両を制御する。また、左右のカメラからそれぞれの画像も取得できる。「カメラは走行環境の影響を受けやすいが、データは大量にある。さまざまなセンサーを組み合わせれば、世界中に対応できる信頼性の高いセンサーになる」(柴田氏)
パートナーとともにスバルらしいEVを
スバルらしいEV(電気自動車)に向けて協業を深化させている相手先の1つがオンセミだ。統合ECUやアイサイトに関してはオンセミとAMD、eAxleはアイシン、バッテリーに関してはパナソニック エナジーがパートナーだ。「カメラで車両をダイナミックに制御しようとしている自動車メーカーはそれほど多くない。制御用のSoCだけでなく、センサーにも工夫を求めたいので、パートナーと共同開発している」(柴田氏)。
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