AUTOSAR導入でコードジェネレーターのしもべに? ARXMLはもっと利活用できる:AUTOSARを使いこなす(33)(3/3 ページ)
車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載第33回は、BSWの可変要素に関する設定が可能なAUTOSAR XML(ARXML)の利活用について論じる。
AUTOSAR XML(ARXML)は、何を表現しているのか
ARXMLに関するよくある解説の仕方は、以下のようなものではないかと思います。
- 1)BSWに関する多数の「設定スイッチ」(configuration parameterやcontainer)の情報:BSWの可変部分のコード生成に使用
- 2)SW-Cのインタフェース定義や、SW-C内部の関数(Runnable Entity)やそれらのトリガ条件などの情報:RTEコード生成に使用
しかし、その本質を見つめ直してみると、以下を機械的に処理可能な形式化されたデータ(machine readableな形)で表現しているということもできます。
- a)再利用したい対象そのものへの期待に関する情報(振る舞いやインタフェース)のうち「可変部分」
- b)統合したい対象(単発利用を想定したものか再利用を想定したものかは問わず)が投入されるコンテキストに関する情報(統合される先の可変要素や、統合あるいは再利用した他のものに関する、振る舞いやインタフェース)のうち「可変部分」
つまり、各種検証の自動化、例えば、テスト環境のセットアップやテストシナリオの自動生成/切り替えなどの各種のテスト自動化や、テスト以外の手法による検証におけるツール支援に使える、「可変部分」に関する情報を多数含んでいる、ということもできます。
もちろん、検証の自動化のためには、「可変部分」だけではなく「固定部分」の情報も必要になります。しかし、それらは検証環境においても「固定」、または、検証上の都合があれば「可変」の部分として組み込むことができるはずです。
さて、これらの情報、「BSWやRTEのコード生成に使ってそれでオシマイ」としていたら、もったいないと思いませんか?
また、そんな形での「AUTOSAR導入」は、ある意味、
コードジェネレーターのしもべ
という状態ではないでしょうか?
実際、ここしばらくのイベントでお目にかかった方々からも、「BSW設定作業は苦痛」「そして、ちょっと設定変更したらまた検証環境をセットアップし直すのはもっと大変」というお声を多数いただいていますが、その際には以下のようにお聞きしています。
「設定データって、再利用可能なものに期待する振る舞いや、それが投入されるコンテキストの情報を多数含んでいますよね? それらを検証の自動化に使っていますか?」
残念ながら回答はいずれもNoであることがほとんどですが、一方で以下のようなお声もいただいています。
「その利活用の可能性は検討するに値する」
次回に続く
今回は、まずはヒントとその前提知識の解説で終わってしまいましたが、次回は、以下の内容を予定しています(記事公開は2024年12月〜2025年1月の予定)。
- (今回の続きとして)利活用の可能性と、再利用性や保守性を左右する「Variant」との向き合い方
- R24-11の内容のご紹介
筆者プロフィール
櫻井 剛(さくらい つよし)イーソル株式会社 ソフトウェア事業部 エンジニアリング本部 エンジニアリング管理部 Safety/Security シニア・エキスパート/AUTOSAR Regional Hub in Japan(Japan Hub)
自動車分野のECU開発やそのソフトウェアプラットフォーム開発/導入支援に20年以上従事。現在は、システム安全(機能安全、サイバーセキュリティ含む)とAUTOSARを柱とした現場支援活動や研修サービス提供が中心(導入から量産開発、プロセス改善、理論面まで幅広く)。標準化活動にも積極的に参加(JASPAR AUTOSAR標準化WG副主査、AUTOSAR文書執筆責任者の一人)。2024年よりAUTOSAR日本事務局(Japan Hub)も担当。
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