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AUTOSARの最新リリース「R22-11」(その2)+SDVとAUTOSAR導入の共通点AUTOSARを使いこなす(30)(1/4 ページ)

車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載第29回は、前回に続いて「AUTOSAR R22-11」について紹介するとともに、自動車業界で注目を集める「SDV」というバズワードとAUTOSAR導入の関係性について考えてみる。

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はじめに

 本稿校正中の2023年9月26日、筆者の地元の新潟県魚沼市で大きな火災がありました。

 最近も月に一度くらいのペースでお邪魔していた喫茶店(魚沼のシメパフェ文化発祥の、同級生のお店)も、残念ながら延焼し全焼してしまいました。

 被害にあわれた皆さまには心よりお見舞い申し上げますとともに、少しでも早くまずは日常生活を取り戻せますようお祈り申し上げます。また、消火や復旧に携わっておいでの皆さまには、改めまして深く敬意をお伝えしたいと存じます。私も微力ながら、できることから少しでもと考えております。なお、復興支援のプロジェクト「南本町商店街火災再生プロジェクト」も早速立ち上げられたとのことですので、ここでご紹介させていただきます。

 さて、前回(第29回)に続きまして、今回も、昨年(2022年11月24日)に発行された「AUTOSAR R22-11(以下、R22-11)」の概要をご紹介していきたいと思います。

⇒連載「AUTOSARを使いこなす」バックナンバー

 ただ、そちらに入ります前に「SDVの時代を踏まえた、AUTOSARの使いこなしの見直し」に関する余談に少しお付き合いいただければと存じます(申し訳ございません、余談というにはだいぶ長くなってしまいましたが……)。

1.「SDV」の時代に「AUTOSARを使いこなす」ということを見直してみませんか?

 最近の自動車分野でのバズワードといえば「SDV」でしょう。

 訳語としてはソフトウェア定義型自動車あるいはソフトウェア定義自動車が使われているようですが、それらや、software-defined vehicleやsoftware-defined mobility※1)のような英語の表現を見ても「いったい、これは何を意味するの?」と思われる方はたくさんいらっしゃると思います。

※1)余談ですが、筆者は、ソフトウェア開発だけをやっていたわけではありませんので、実は無線従事者免許(業務用のもの)なども持っています。そんなこともあって、「software defined radio」というキーワードを見つけたとき、気になっていろいろ調べたことがあります(2010年代半ばだったと思います)。当時ですら「ソフトなしでは……」という時代でしたので、「software definedって、いまさら、何なの?」という疑問が浮かんだからです。

 残念ながらそこでモヤモヤが解決したかといえばそうではなかったのですが、その際に「software defined mobility」という表現が「TM」マーク付きで使われていたのを見かけたことを、本稿を書いている最中にふと思い出しました。

 早速調べてみたところすぐに、当時見たと思われる資料が見つかり、それを頼りに米国のTESSで調べたところ、2014年10月16日に出願されいったん登録されたものの、2022年7月8日付で登録更新されなかったことによる権利消滅、となっていました。また、内容も、異なる意味でのmobilityに対するものでした(mobility違い)。なお、類似の名称ですと、software defined everythingなんてものの商標登録が存続していました(software defined vehicle、software defined carやsoftware defined networkについては見当たりませんでした)。

 さらに余談の余談ですが、日本国内では2023年5月6日に「SOFTWARE DEFINED VEHICLE」の商標出願が行われています(商願2023-54199)。称呼(しょうこ)はだいぶ広くとられており、「ソフトウエアデファインドビークル、ソフトウエアディファインドビークル、ソフトウエアデファインド、ソフトウエアディファインド、デファインドビークル、ディファインドビークル、デファインド、ディファインド」までが含まれます。商標分野の方々にはよく知られたパターンそして出願者のようですし、執筆時点(2023年9月18日)では「方式未完」の表示がありますので、出願手数料未納などなんらかの手続き上の不備があるようです。この出願が2023年春に行われたということは、自動車業界内では既に普通に使われていた用語であるsoftware defined vehicleが、ようやくそのくらいの時期から一般にも認知されるようになったということなのでしょうか(本件は、あえてここまでにしておきたいと思います)。

 歴史を振り返ってみると、自動車におけるマイコンやソフトウェアの利用は1970年代にまでさかのぼるとのことです。※2)

※2)国立科学博物館産業技術史資料情報センター 産業技術史資料共通データベース(HITNET)で、「自動車 マイコン」で検索した結果より(Last access:2023年9月17日)。

 その頃のマイコンの利用はエンジンECUのみで、他の文献によればソースコード行数も2000行程度だったそうですが、時とともにECU規模も総数も増大し、ECU間通信ネットワーク技術を用いて相互につながるようになりました。ソースコード行数は図1に示すように指数関数的に増大し今や1億行ともいわれています。また、AI(人工知能)利用が進み、もはやソースコード行数だけでは規模を表現できなくなってしまっています。

図1
図1 データで見るソフトウェアの規模の増大[クリックで拡大]

 2000年代初頭には、自動車分野でのソフトウェアの重要性の理解がだいぶ高まり、筆者が標準化活動に現在も参加しているAUTOSAR(AUTomotive Open System ARchitecture)やJASPAR(Japan Automotive Software Platform and Architecture)が設立されました。

 また、AUTOSAR設立から10周年となった2013年には、イノベーションにおける、エレクトロニクスとソフトウェアの寄与比率は90%に達するとの評価が示されています。※3)SDVと騒がれるようになった近頃急に、ソフトウェアの重要性が高まったというわけでもないのです。

※3)10 years AUTOSAR:The Worldwide Automotive Standard for E/E Systems, ATZextra(2013年10月23日)

 では、SDVで何が変わるのでしょうか?

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