使用済みリチウムイオン電池のリサイクル過程を追跡可能なデータに、PoCをスタート:リサイクルニュース
サトーとエンビプロ・ホールディングスは、使用済みリチウムイオン電池の回収から再資源化までのリサイクル過程の履歴をトレースできるトレーサビリティーシステムの概念実証(PoC)を2024年10月28日に開始した。
サトーとエンビプロ・ホールディングスは2024年10月30日、使用済みリチウムイオン電池の回収から再資源化までのリサイクル過程の履歴をトレースできるトレーサビリティーシステムの概念実証(PoC)を同月28日に開始したと発表した。
使用するトレーサビリティーシステムの利用手順とPoCの概要
今回のPoCで使うトレーサビリティーシステムの利用手順は以下の通り。まずエンビプログループのVOLTAが手掛けるリチウムイオン電池の回収、処理、再資源化の過程を、サトーのRFID温度ロガータグ「LogBiz-Thermo(ログビズ・サーモ)」などを用いてデジタルデータ化し、このデータをクラウドサーバへアップロードする。
LogBiz-Thermoは、スマートフォンの近距離無線通信(NFC)読み取り機能を使って温度データを収集できるため、専用のRFIDリーダーが不要だ。LogBiz-Thermoにより位置情報と時系列で記録している温度情報は、スマートフォンの通信機能でクラウドサーバへアップロードされる。
並行してエンビプログループのブライトイノベーションが開発を進めるトレーサビリティー管理システム「TraceView(トレースビュー)」へデータを蓄積し、CO2排出量の算定も同時に行う。蓄積するデータは、使用済みリチウムイオン電池の回収量や各処理工程の日時、在庫量、保管場所、温度、ブラックマスの製造量などだ。
これらの履歴をシステム上で可視化することで、リサイクル過程のトレーサビリティーを実現する。
具体的には、使用済みリチウムイオン電池が入ったドラム缶にRFID温度ロガータグと、衝撃データロガーを貼り付ける。各ロガーの機能を有効にし、ロガーおよびIDを付与したタグとして貼り付けて出荷。輸送中は温度ロガーと衝撃データロガーでログを継続的に記録して状態をモニタリングする。
リチウムイオン電池のリサイクル工場では、タグのIDを軸に在庫管理および工程内のステータスを記録し、各種履歴をトレースできるようにする。これらのIDと、製造したブラックマスの容器に付与された出荷IDをひも付けることで、リチウムイオン電池が適正に処理された履歴を一気通貫で確かめられるようになり、リチウムイオン電池の排出会社にもそのデータが提供可能になる。
今後は経済産業省が2023年4月に発表したイニシアチブ「ウラノス・エコシステム」へのデータ連携も視野に入れている。
なお、今回のPoCでは同トレーサビリティーシステムでリチウムイオン電池の回収から再資源化までのデータを取得し、その実効性と実用性を検証する。
PoCで利用するリチウムイオン電池
PoCには、使用済みのサトー製プリンタから回収したリチウムイオン電池を使用する。今回の取り組みを通して、サトー製プリンタ用リチウムイオン電池の再資源化を進めていく想定だ。
PoCの背景と目的
さまざまな製品で幅広く使用されているリチウムイオン電池は、普及するとともに廃棄量が増加している。リチウムイオン電池の材料となるリチウムやニッケル、コバルトなどのレアメタルは、将来的に材料不足が予想されている。そのため、使用済みリチウムイオン電池の回収から再資源化の効率向上は社会課題の1つとなっている。
そこで、サトーとエンビプロは、リチウムイオン電池のリサイクル過程をデジタルデータとして取得し、将来的にはバッテリーパスポートにデータ連携することを目的に、処理過程の可視化とリサイクル資源の生産量予測などを実現するためにPoCを行う。
また近年、使用済みリチウムイオン電池の輸送中や廃棄物処理の過程において、発熱/発火による火災事故が急増している。この対策として、使用済みリチウムイオン電池の回収から処理過程までの温度と衝撃の情報を継続的に収集/データ化し、事故防止に役立てることも目的としている。
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