ケミカルリサイクルPETを用いた透明蒸着フィルムを開発、国内の食品衛生法にも対応:リサイクルニュース
DNPは、ケミカルリサイクルしたポリエチレンテレフタレート(PET)を使用して水蒸気/酸素などのガス透過を防ぐ「DNP透明蒸着フィルム IB-FILM」を開発した。
大日本印刷(DNP)は2024年10月22日、ケミカルリサイクルしたポリエチレンテレフタレート(PET)を使用して水蒸気/酸素などのガス透過を防ぐ「DNP透明蒸着フィルム IB-FILM」を開発したと発表した。
ケミカルリサイクルは、廃プラスチックを化学的に分解し、製品の原料として再利用する手法だ。廃プラスチックを物理的に粉砕などして再利用するマテリアルリサイクルと異なり、化学的に分解して再度合成する過程で微細な異物が取り除かれ、衛生的でバージン樹脂と同等品質のリサイクル樹脂に再生できる。
ケミカルリサイクルPETを用いた透明蒸着フィルムの特徴
DNP透明蒸着フィルム IB-FILMは、マテリアルリサイクルと比べて衛生性が高いケミカルリサイクルで再生したPETフィルムを使用している。再生プラスチックを素材としているが、日本の食品衛生法にも適合する高い衛生性を持つ。
ケミカルリサイクルしたPETフィルムにDNP独自の蒸着/コーティング技術を生かすことで、従来のIB-FILMと同等の高いガスバリア性を有す。これにより水蒸気や酸素の透過を低減し、食品の鮮度や医療用品の無菌性保持を実現する。
内容物のレトルト(加圧加熱殺菌)やオートクレーブ(高圧蒸気殺菌)が可能な耐熱性も備えている。複数のフィルム層構成を工夫することで、殺菌処理を行ってもバリア性を損なわず、内容物の長期保存に対応する。
ベースのケミカルリサイクルPETフィルムにはリサイクルPET樹脂を30%以上配合しており、バージン樹脂を使用したPETフィルムと比べてCO2排出量を減らせる。
今後は、食品や医療/医薬品、産業資材のメーカーに同製品を提供し、2026年度までに単年で30億円の売上高を目指す。DNP透明蒸着フィルム IB-FILMのラインアップも継続的に拡充する。
ケミカルリサイクルPETを用いた透明蒸着フィルムの開発背景
近年、持続可能な形で資源を利用するサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現が求められる中、パッケージでも、環境に配慮した持続可能な再生材料の調達ニーズが高まっている。しかし、マテリアルリサイクルで再生したプラスチックは、異物混入や汚染の除去不足などで品質(物性)が低減するという課題がある。加えて、食品や医療/医薬品、産業資材用のパッケージで求められる高い衛生性が確保できないという課題があった。そこで、DNPはDNP透明蒸着フィルム IB-FILMを開発した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- DNPがフォトメディアの梱包材をプラスチックから紙に変更しCO2排出量を約69%削減
大日本印刷は、昇華型フォトプリンタ向けに自社で製造するフォトメディア(インクリボンや用紙など)を保護する梱包材をプラスチックから紙に2024年5月から切り替えている。 - 植物由来のフィルムを採用しCO2排出量を13%削減したバッグインボックス
DNPは、バックインボックスの内袋に「DNP植物由来包材 バイオマテック」のポリエチレンを採用した「DNPバッグインボックス エキタイト バイオテック仕様」を開発した。 - DNPがプラスチック部分を100%リサイクル材にしたICカードを発売
大日本印刷(DNP)は、循環型社会の実現に向けて、非接触対応ICクレジットカードのプラスチック部分全体をリサイクルPVC(ポリ塩化ビニール)で製造することを実現し、同製品の販売を2024年4月に開始すると発表した。 - DNPが透明導電フィルム市場に再参入、直径11nmの銀ナノワイヤを採用
DNPは粒径11nmの銀ナノワイヤ分散液を用いた透明導電フィルムを武器に、一度撤退した透明導電フィルム市場に再参入する。 - DNPが食品用紙トレイの資源循環システムを構築
大日本印刷は、「DNP易剥離紙容器 紙トレイ」をイベント会場の飲食店などで使用した後、紙とフィルムを分離して回収し、回収した施設に提供する「資源循環システム」を構築した。