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知っておくべき無線通信技術の基礎知識と製造現場の無線通信環境製造現場への無線通信技術の導入(2)(3/3 ページ)

本連載ではNEDOが公開している「製造現場における無線通信技術の導入ガイドライン」の内容を基に製造現場への無線技術の導入について紹介する。第2回は、無線通信技術の基礎知識と製造現場における無線通信環境、無線システム導入時の注意点を説明する。

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無線システムの導入時の注意点

 無線通信を導入する際の製造現場における注意点を以下に示します。

導入・エリア変更時にサイト設計やテストを実施する

 新しい無線システムの導入や、レイアウト変更などによってエリアが変わる場合には、入念なテストを実施することが必要です。これにより、実際の運用環境での電波の到達範囲や、電波干渉の有無、マルチパスによるフェージングの影響などを確認できます。

 このように、工場内の物理的な障害物や、他の機器との干渉が通信に与える影響を事前に把握することで、トラブルを防ぐことが可能です。

 シャッターの開閉、在庫増減、作業員の動きなどは、工場稼働時のみのイベントになるため、テストは可能な限り工場の稼働時間内に1週間以上実施することが望ましいと考えられます。なお、計測の際には、電波環境をスペクトラムアナライザーで把握し、周囲の無線の変化や干渉の有無なども確認しておきます。

導入した無線に関する台帳を作成し記録しておく

 無線機器の導入に際しては、台帳を作成し、どの無線機器が、どのタイミング(時間)で、どの周波数帯を使用しているか、どのくらいのデータ量か、また、どこに設置されているかなどを記録しておくことが重要です。

 これらの記録があることで、トラブルが発生した際に迅速な対応が可能となり、無線環境の全体最適化がしやすくなります。また、工場のレイアウトの変更や新規の無線機器の導入の際にも、台帳があることで事前に状況を確認でき、スムーズな対応を行えます。

柔軟性を持った無線システムを導入しておく

 製造現場の無線通信環境の変動に対応するためには、柔軟性を持った無線機器の導入が求められます。例えば、移動可能なAP(アクセスポイント)や、レイアウト変更に対応できる可搬性のある無線機器を選定することで、変化に強い通信環境を構築できます。

 特にレイアウト変更を頻繁に行うラインでは、免許不要な周波数帯の規格を選定してAPなどを移動可能にしておく、周囲に影響を与えるほど飛ばない帯域や出力にして構築しておく、使用している周波数帯やチャンネルを他のラインでは使わないようにしておくなどの工夫が必要です。


 次回以降は、製造現場での活用シーン、無線通信の導入ステップなどについて解説していきます。

小川 吉大(おがわ よしひろ)

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

半導体・情報インフラ部

総合電機メーカーの研究所で、情報処理・情報通信の研究開発に長年にわたり従事すると共に、社内の技術交流と研究促進および人材育成の活動に携わった。現在は、NEDOにて「5G等の活用による製造業のダイナミック・ケイパビリティ強化に向けた研究開発事業」のプロジェクトマネジャーを務めている。

下山 智央(しもやま ともひさ)

PwCコンサルティング合同会社

Government & Public Services、通信・メディア領域 ディレクター

無線・有線通信にかかる制度設計、実証試験、利活用・実装に関する支援を中心にコンサルティング業務に従事。製造現場における無線通信の導入・運用支援についても、長年にわたり携わっている。NEDOが公開している「製造現場における無線通信技術の導入ガイドライン」の執筆も担当した。

→連載「製造現場への無線通信技術の導入」のバックナンバーはこちら

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