無線技術の活用で製造現場は何が変わるのか、オムロンらが協創プロジェクト:スマートファクトリー(1/2 ページ)
ネットワンシステムズ、明治電機工業、オムロンの3社は共同で次世代無線協創プロジェクトを進め、次世代の製造現場の実現を目指す。
ネットワンシステムズ、明治電機工業、オムロンの3社は2024年8月6日、共同で進める次世代無線協創プロジェクトについて東京都内で説明会を開き、会場でAMR(自律走行型ロボット)を使ったデモンストレーションを披露した。
変種変量生産に柔軟に対応する製造現場
市場ニーズの多様化などを背景に、多品種少量生産、さらには変種変量生産へのニーズが高まる中で、従来の固定設備による生産ではなく、AMRなどの搬送ロボットを活用した柔軟で拡張性を持った生産ラインが求められている。そこで必要となるのが無線技術だ。
今回のプロジェクトを通じて、ITインフラの構築に関するノウハウを持つネットワンシステムズと、工場の自動化システムの設計、構築において豊富な経験を持つ明治電機工業、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)やAMRなどの幅広いFA製品群を持つオムロンの3社が、次世代の製造現場に貢献するソリューションの開発を目指す。
ネットワンシステムズ 中部事業本部 第1営業部長の田中寿弥氏は「無線技術へのニーズは間違いなく高まっている。特にフィットするのが移動体の活用だ。最先端の無線技術を活用することで、柔軟な配置変更や迅速な設備導入、環境への配慮やスペースの有効活用、コスト低減といったメリットがもたらされる。3社の強みを生かしたデモ環境を構築して共同研究していきたい」と語る。
オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー ロボット事業本部 事業企画室 室長の吉田健一氏は「変種変量生産が求められる製造現場では、品種に応じてレイアウトを変更したり、作り方を変えたりする柔軟な対応が必要となる。また、ERPやMES(生産実行システム)と連動することで、工場全体の生産計画とデータを共有して最適な生産性を追求できる。モバイルロボットは需要変化に強い人との協調的な搬送や継続的な搬送効率改善、スループットの向上などが見込める」と話す。
明治電機工業 第1営業本部 第1営業部 部長の安部功氏は「ハードウェアに依存することで、バージョン管理などのアセット管理や制御機器のバリエーション増加などさまざまな課題が生じている。それらを仮想化することでデータ集約により分析が容易になり、メンテナンス、資産管理業務も簡略化するなどのメリットが生まれる。ただ、ライン生産制御を仮想化するには無線インフラが必要不可欠だ」と述べる。
用途ごとに最適な無線技術を選択
無線技術に対する懸念の1つが遅延だ。製造現場では、用途ごとに許容される遅延時間が異なるため、制御、品質、管理、表示、安全など適用範囲を見極めて段階的な無線化を検討することが重要となる。特に制御や安全に関する領域は厳しい通信要件となり、まだ現実的ではない。表示や管理などの領域で、遅延にして25m〜50msの通信要件では無線技術が適用可能となる。
免許不用で使用できる小電力の通信規格であるWi-Fiは対応機器が多く、導入コストが安いため、普及も進んでいるが電波干渉などの課題もある。現在、2.4GHz帯、5GHz帯、一部6GHz帯が利用されており、2024年度中にも残りの6GHz帯が利用可能となる予定だ。対応機器を使用すれば電波干渉などの問題も大きく改善される見込みだ。
ローカル5Gは総務省から免許を取得して使うライセンスバンドであり、安定した通信性能を発揮する。強い出力で電波を送出するため、Wi-Fiに比べてカバーする範囲が広い他、壁などの透過性も高い。ユーザー数が増えても安定した通信品質を維持する。一方で、対応機種まだ限定されている他、免許取得の手間や基地局設置のコストも課題となっている。
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