NSKが新たな工作機械向け軸受やボールねじ、環境配慮型の製品投入へ:工作機械
NSKは工作機械の生産性向上や省エネルギーに貢献する製品を相次いで発表。いずれも「第32回日本国際工作機械(JIMTOF 2024)」において参考出品する。
日本精工(NSK)は2024年10月4日、工作機械の生産性向上や省エネルギーに貢献する製品を相次いで発表した。いずれも「第32回日本国際工作機械(JIMTOF 2024)」(2024年11月5〜10日、東京ビッグサイト)において参考出品する。
新開発のころ案内保持器でグリス寿命などを向上
マシニングセンタの主軸用精密単列円筒ころ軸受「ロバストライド」は、新開発の「ころ案内保持器」を採用し、グリス寿命、許容回転数、グリス慣らし性を向上させた環境貢献型の新製品だ。2025年度の量産化と2030年度の売り上げ10億円を目指している。
主軸の軸受の潤滑方式には、運転時に潤滑油と圧縮空気の混合流を噴射して給油を行うオイルエア潤滑と、初期封入のグリスのみで運転中の給油を行わないグリス潤滑がある。 付帯設備が要らず電力消費が少ないグリス潤滑が注目されているが、グリス潤滑ではグリスの劣化が生じる他、グリス寿命による軸受の損傷が課題となっていた。軸受の交換頻度が高いため、機械のメンテナンスサイクルが短く、高速時に劣化しやすいため使用回転領域に制限があった。
NSKでは今回、グリス寿命を向上させるため、保持器の案内方式に着目した。保持器は転動体(玉または、ころ)の間隔を保つ役割を持つ。保持器には外輪案内保持器ところ案内保持器の2つがあるが、グリスの封入量や高速時の耐久性、グリスの排出性にそれぞれ長所と短所があった。
同社が高速回転時の耐久性が高い外輪案内保持器を現行品に搭載している。軸受のグリス寿命を向上させるためには、グリス封入量が多いころ案内保持器が有効だが、耐久性が低いため軸受の許容回転数が少なくなるという課題があった。
そこで、軸受内部の設計と保持器の形状、材料を最適化し、従来のころ案内保持器に対して最大80%強度を向上させたころ案内保持器を開発した。具体的には、ころ案内保持器の柱と呼ばれる部位の強度などを改善したという。
それを新製品のロバストライドに採用することで現行品と比較して、グリス寿命を最大60%、許容回転数を最大20%向上し、さらにグリス慣らし運転時間を約3分の1に短縮させることに成功した。
動摩擦トルクの低減で工作機械の精度維持
低フリクションボールねじ「MT-Frix」は動摩擦トルクを低減し、工作機械の精度維持や省エネに貢献する新製品だ。2025年4月に受注を開始し、同シリーズの売り上げとして2027年に年間5億円を目指している。
工作機械の直線駆動部に搭載されているボールねじは、工具やワークの位置決めを担っている。近年、脱炭素の潮流から、このボールねじに対しても位置決め精度の高精度化や省エネルギー化のニーズが高まっているという。
ボールねじは、ボールが溝を転がる際に発生する動摩擦トルクによって発熱し、ねじ軸が熱膨張して位置決め精度が低下する。発熱を防ぐために付属装置などで強制冷却することも可能だが、エネルギー消費が高まってしまう。そのため、高精度化と省エネを実現するためには、動摩擦トルクの低減が必要だった。
ただ、従来の技術では動摩擦トルクを低減すると剛性も低下してナットが変位しやすくなり、加工精度が低下するという課題があった。
今回、NSKでは同社の解析手法であるリアルデジタルツインを用いてボールと溝の接触状態を解明し、最適な内部仕様を開発。ボールねじの寸法はそのままに剛性を維持しながら動摩擦トルクを従来品比で最大50%低減することに成功した。
動摩擦トルクの低減により、工藤時の発熱も従来品比で最大40%低減。軸の伸長を40%低減することで位置決め精度の低下を軽減した。機台や周辺部品への伝熱も小さくなり、工作機械としての熱変形も低減する。動摩擦トルクの低減により、CO2排出量も従来品に対して最大50%削減する。
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