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風力発電の大型化/洋上化に対応する長寿命円すいころ軸受、欧州メーカーも採用へFAニュース

日本精工(NSK)は風力発電機用次世代高負荷容量円すいころ軸受を開発した。

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 日本精工(NSK)は2024年2月27日、風力発電機用次世代高負荷容量円すいころ軸受を開発したと発表した。

 カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーの1つである風力発電への関心が高まっている。当初は陸上の風力発電が中心で、風を受けるブレードを組み合わせたローターの直径は最大でも100m程度だったが、近年は洋上の風力発電の割合が高まるとともに、ローターの直径が200mを超えるものも登場するなど大型化している。

 ローター直径が大きくなるほど発電効率は高まる。洋上は陸上に比べて風の乱れがなく、一定の風力を得ることができる。ただ、風力発電設備の大型化が進むと建設コストはふくらみ、洋上ではメンテナンスコストが高まる。それらを削減するため、製品への高い信頼性や軽量化が求められている。

 風力発電ではブレードが風を受けて主軸を回し、その回転を増幅機によって発電に必要な回転速度まで増幅、増幅された回転を発電機が電気エネルギーに変換する。今回、NSKが開発したのは増幅機に使用される新しい円すいころ軸受となる。


風力発電機の増速機と開発品[クリックで拡大]出所:NSK

 開発品では転動体のクラウニング形状を新しくした。このクラウンニング形状とは、軸受の構成部品である「ころ」に施される、ころ端部での応力集中を避けるためのわずかな円弧形状を指す。従来の形状では、荷重がかかった際の面圧分布が不均一となる場合があり、荷重負荷能力に課題があった。

 風の強さは常に一定ではなく、さまざまな使用条件を想定する必要がある。NSKは解析技術を用いてあらゆる条件をシミュレーションし、最適なクラウニング形状を見いだして、負荷容量を従来製品比で約25%向上することに成功した。これにより2倍以上の軸受の長寿命化が可能になるという。また、複雑なクラウニング形状を生産性を落とさず加工する技術も開発した。


従来品と開発品のころのクラウニング形状の違い[クリックで拡大]出所:NSK
従来品(左)と開発品(右)の面圧分布の違い[クリックで拡大]出所:NSK

 耐ミスアライメント性能も向上している。ミスアライメントとは軸受の外輪と内輪の相対的な傾き角のことを指す。軸受の取り付け誤差や軸のたわみなどの影響で外輪と内輪が傾き、ミスアライメントがある状態で使用すると軸受には局所的に大きな荷重がかかり、損傷の要因にもなる。今回の開発品を用いることで、ミスアライメントがある状況下でも、従来製品比で軸受寿命が2倍以上となる。

 これらによって高負荷重条件においても軸受を大型化する必要がなくなり、同等の使用条件では従来製品比で最大30%以上の軽量化が可能になるという。軸受が大型化すると増幅機や、それらが収まったナセルも大きくなる。軽量化によって全体のコストダウンにもつながる。

 既に欧州の大手風力発電機メーカーの出力15MW級の洋上風力発電向けの増幅機への採用が決まっており、2024年度に量産と納入を開始する。2024年度中に中国の増幅機メーカーへも納入を開始する予定という。NSKでは2026年に年間40億円の売り上げを目指している。

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