微生物が照明に? パナソニックHDが大阪万博で示す将来技術:研究開発の最前線
パナソニック ホールディングスは、大阪・関西万博のパナソニックグループパビリオンで、将来を見据えた環境配慮型の技術として「バイオライト(発光微生物)」を出展する。
パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)は2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のパナソニックグループパビリオンとして「ノモの国」を出展予定だが、その中で将来を見据えた環境配慮型の技術として「バイオライト(発光微生物)」を出展する。
パナソニックグループのパブリオンでは環境関連の技術を展示
パナソニック ホールディングスは、大阪・関西万博で「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい。」をコンセプトにパビリオン「ノモの国」を出展する。「Unlock your nature」をタグラインとし、子どもたちに「自分を信じるチカラと一歩を踏み出すきっかけ」を提供することを目指している。
そのコンセプトの下、体験を中心とした「Unlockエリア」と、環境配慮型の先進技術の展示を行う「大地エリア」の2つのゾーンを用意している。「大地」では、ひとの営み、自然の営み、それぞれが360度の循環が作用しあって巡る「720度の循環」を展示空間で表現。研究開発中のシアノバクテリア(光合成微生物)、ペロブスカイト太陽電池、生分解性セルロースファイバーなどを出展する。
自然界で発光する微生物を活用した明かり
こうした技術の1つとして出展するのが「バイオライト」だ。バイオライトや自然界に存在する蛍や夜光虫など、動物が発光する仕組みをそのまま生かし、明かりへと応用することを目指したパナソニックHDで開発中の技術だ。具体的には、発光を触媒する酵素が入りの水槽で培養した発光微生物に対し、展示水槽に酸素を送り込むことで、微生物が発光することで得られる明かりの活用を目指している。大阪・関西万博では、展示水槽やびんなどにより手に取って、微生物が発光する様子を観察できるような展示を考えているという。
パナソニックHDでは、以前から製品開発における生体への反応を確認するために微生物に対する基礎研究は行っており、その中で発光微生物についても取り扱っていた。今回大阪・関西万博で出展する技術をパナソニックグループ内で集める際に、発光微生物の明かりを生かせないかと考えて応募し選ばれたという。
研究開発では、発光微生物の最適な長期培養条件を確立するため、培地選定や水質選定、水循環システムなどの構築などに取り組んでいる。「餌となる酵素の組み合わせや水温、酸素の循環などの条件などさまざまな組み合わせを試しているところだ」(担当者)としている。
まだまだ明かりとして活用するには明るさが足りないが「5〜10年先に何らかの形で製品やビジネスとして進めばよいと考えている。まだまだ技術的には課題が多いのは事実だが、自然の発光を生かすということで、ひとと自然の関わりをあらためて考えるきっかけにもなると考えている」(担当者)。
照明演出や端材活用のワークショップやアイデアソンも開催
パナソニックHDでは、大阪・関西万博のプロモーションにも力を入れており、2024年9月27日には、パナソニックグループのパビリオンデーの内容発表なども行った。「ノモの国」での体験と技術展示に加え、ストリートダンスのコンテストや、子どもたちが参加できる「ノモのコ プロジェクト」などを用意。照明演出を考えるワークショップや、ファサード膜の端材をアップサイクルで活用するアイデアを募る「ハザイソン」などを開催する。
パナソニックHD 関西渉外・万博推進担当参与 小川理子氏は「ノモの国を通じて、子どもたちが自らの可能性に気付くきっかけに出会えるとうれしい」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 使用済み家電や工場の廃材が生きる「ノモの国」、パナソニックの環境技術が光る大阪万博パビリオン
パナソニック ホールディングスは2025年開催予定の大阪・関西万博で出展するパビリオン「ノモの国」における環境配慮の取り組みを紹介した。 - 環境を切り口に“売った後に価値が上がるモノづくり”に挑戦するパナソニックHD
2022年に環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」を発表し着実にアクションをとり続けているのがパナソニックグループだ。同社グループの環境問題についての考え方や取り組みについて、パナソニック ホールディングスのグループCTOである小川立夫氏に話を聞いた。 - パナソニック、実用サイズのガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池を開発
パナソニックグループは、「CEATEC 2024 TOWARD SOCIETY 5.0(CEATEC 2024)」で、「ガラス建材一体型のペロブスカイト太陽電池」や環境配慮型素材「kinari/PPFRP/PALM LOOP」などを披露する。 - 世界が挑む「バイオものづくり」、日本は高機能化学品にチャンス
NEDOが短信レポート「環境・エネルギー分野へ貢献するバイオ産業 ―バイオものづくりの課題と可能性―」について説明。日本政府の「バイオ戦略」や「グリーン成長戦略」の達成に求められる「バイオものづくり」を、日本国内でどう進めるべきかについての分析を報告した。 - 細胞がモノづくりする「スマートセルインダストリー」、島津と神戸大が実証開始
島津製作所と神戸大学は、先端バイオ工学を用いて人工的に遺伝子を変化させた細胞「スマートセル」によって、医薬品や食品、新素材、石油化学製品代替素材などの量産を可能にする「スマートセルインダストリー」に向けて、ロボットとデジタル技術、AIなどを活用した自律型実験システムのプロトタイプの有用性検証を開始した。 - 大統領令で加速する米国のバイオエコノミーR&Dとデータ保護
米国では、本連載第44回で取り上げたAI、第80回で取り上げたサイバーセキュリティなどのように、大統領令を起点として、省庁横断的なトップダウン型で、一気に科学技術支援策を推進しようとするケースが多々見られる。今注目を集めているのはバイオエコノミーだ。