ドーパミンによるアミロイドβの分解機構を発見:医療技術ニュース
理化学研究所らは、アルツハイマー病の初期病理学的因子であるアミロイドβペプチドの分解酵素ネプリライシンが、ドーパミンにより制御されていることを発見した。
理化学研究所は2024年8月7日、AD(アルツハイマー病)の初期病理学的因子Aβ(アミロイドβ)ペプチドの分解酵素ネプリライシンが、ドーパミンにより制御されていることを発見したと発表した。さらに、ドーパミン前駆体のパーキンソン病治療薬レボドパの投与により、ADモデルマウスの認知機能が回復することを確認した。国際共同研究による成果だ。
研究グループは、Aβ分解の異常によりAβが蓄積すると考え、培養細胞を用いた脳内神経伝達物質およびホルモンの網羅的スクリーニングを実施し、ドーパミンがネプリライシンの活性制御因子であることを発見した。ドーパミンに暴露された神経細胞は、ネプリライシンを介して、培地中のAβ量を低下させた。
次に、化学遺伝学的手法を用いて、マウス個体におけるドーパミンのネプリライシン発現、活性調節への関与を調べた。その結果、腹側被蓋野のドーパミン作動神経細胞を長期間活性化させると、ドーパミンの放出により投射先である前頭前皮質においてネプリライシンが活性化し、Aβが減少することが明らかとなった。
ADモデルマウスにレポドパを投与すると、主に前頭前野におけるネプリライシンの発現が高まり、Aβ蓄積量が低下した。長期間投与すると、異常だった認知機能が回復していることも明らかになった。
若齢と高齢の野生型マウスの比較解析では、加齢により前頭前野のドーパミン量とネプリライシンの発現が低下することが示された。また、高齢の野生型マウスとADモデルマウスとの比較解析から、ADモデルマウスの方がさらに前頭前野のドーパミン量とネプリライシンの発現が低下することが明らかとなった。これらの変化は前頭前野以外の脳領域では確認されず、前頭前野におけるドーパミンがADの病態形成に関与している可能性が示唆された。
今回の成果は、根本的なADの予防や治療法に結び付く可能性があり、特にレポドパは有用なAD予防薬となる可能性が示された。
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