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中小製造業はスマートファクトリーを目指すべきか?3D設計の未来(13)(2/2 ページ)

機械設計に携わるようになってから30年超、3D CADとの付き合いも20年以上になる筆者が、毎回さまざまな切り口で「3D設計の未来」に関する話題をコラム形式で発信する。第13回は、中小製造業における「スマートファクトリー」の実現にフォーカスして、筆者の考えを述べる。

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スマートマニュファクチャリングの優位性

 スマートマニュファクチャリングとは、“エコシステム”と呼ばれる仕組みを利用した製造のことを指します(詳しくは後述)。エコシステムもまた、少々分かりにくい用語なので以下に簡単に補足します。

エコシステムとは:

プラットフォーム上、または社内システムにおいて、異なるアプリケーションやシステム同士がお互いにつながることで、情報連携、情報共有が可能になり、部門や業務プロセスなどの垣根を越えた、より大きな価値や効果を生み出す仕組みのこと。例えば、製品開発においては、1つのプラットフォーム上で3D CAD、CAE、PDM、CAMなどが連携することで、品質向上、コストダウン、納期短縮などを実現する。アプリケーションやシステム同士のつながりではなく、それぞれ独自の得意分野や強みを有する企業同士のつながり/パートナー連携のことをエコシステムと呼ぶこともある。


 さて、今の日本の製造業、特に中小製造業にとって、最も必要となるモノづくり環境は何でしょうか。前回、「デジタルエンジニアリングを駆使したモノづくりを、製品設計の段階から行うことこそが、これから日本で必要とされる付加価値のある生産管理であり、生産管理を再定義することにつながります」と説明しました。

 インダストリー4.0を実現する大規模な環境やリソースを必要とする仕組みに限らず、「小さな開発設計製造環境」であっても、デジタルエンジニアリングを駆使したモノづくり、日本で必要とされる付加価値のある生産管理は実現可能だと筆者は考えます。

 これまでも、製品設計の段階から品質の最適化は当たり前のように行われてきました。最適化ではCAEによる妥当性検証も行い、設計にフィードバックすることも行っていますが、これらは机上での確認にすぎません。

 開発設計プロセスから製造プロセスに移行する前段階で、「試作」を行うことがありますが、試作で問題が見つかれば設計に差し戻されて、設計の手直しが必要になります。例えば、かつて筆者が経験してきた個別受注生産型の製品設計の場合は、一部の部品であっても試作することはほとんどなかったため、製品組み立て後に問題が見つかると、設計まで差し戻され、スケジュールやコストに多大な影響を与え、大問題になっていました。

 開発設計プロセスの中に、製造プロセスでの検証を含むことができれば、設計者は製造上の問題を設計の早い段階で見つけ、その対策を採ることが可能です。これにより、スケジュールやコストに大きく影響するような手戻りは大幅に削減できるはずです。

 試作部品であれば3Dプリンタを用いて評価可能です。また、成形品の設計であれば、3D CADと設計者CAE、さらにはCAMによって金型切削データを作り、CNC加工を経て、量産品と同じ材料でのサンプル評価まで行えます。これが今求められている考え方であり、このアプローチによるデザインのことを「プロトタイプ」と呼んでいます。プロトタイプの考え方は以前からありましたが、もう一度、このプロトタイプの有効性を考えるべきだと筆者は考えます。

プロトタイプの有効性とは:

機能やデザインのみを実装したプロトタイプ(試作品)を作ることで、新しいアイデアやデザイン、使用感、工程などを検証できる。このプロトタイプにより、製品の問題点や改良点を早期に見つけ出すことができ、より良い製品開発を可能にする。


 筆者が所属するスワニーでは、このような環境をスマートマニュファクチャリングと捉え、わずか5×5mのスペースの中に、最新のデジタルエンジニアリングシステム(3D CAD/CAE/CAM、3Dプリンタ、射出成形機、CNC)が連携するエコシステムを実現し、「DESIGN FACTORY」という名称で展開しています。DESIGN FACTORYは、未来型のモノづくりを実践するシステムとして機能しつつ、デジタルエンジニアリングを駆使できる人材を短期間で育てるという役目を担います。冒頭でお話したようなセンシングを活用したIoTの要素などはありませんが、そこには、デジタルによる連携と開発設計のスピード感があります。

スマートマニュファクチャリングとは:

「スマートファクトリー」といわれる“工場”全体の大規模なエコシステム、仕組みとは異なり、中小製造業や開発設計製造部門といった小規模な環境を集約したエコシステム、デジタル連携に基づき“製造”を行うアプローチのこと。スワニーでは、こうした環境を「スマートマニュファクチャリング」という新たなスマートファクトリーとして捉え、「DESIGN FACTORY」の名称で展開している。


スワニーのスマートマニュファクチャリング環境
図1 スワニーのスマートマニュファクチャリング環境[クリックで拡大] ※スワニーの資料を基に筆者が編集

 ここでは筆者が所属するスワニーのDESIGN FACTORYを例に紹介しましたが、中小製造業でも、スマートマニュファクチャリングの環境であれば、現実的なリソースで導入/継続可能であり、未来型のモノづくりを実践することができます。スマートマニュファクチャリングという考え方が、中小製造業の生き残りにつながる一つの選択肢になり得るのではないかと筆者は考えます。そして、前回「日本の生産管理を再構築する」というお話をしましたが、スマートマニュファクチャリング環境は「日本のモノづくりを再構築する」可能性を秘めていると確信しています。 (次回へ続く

⇒ 連載バックナンバーはこちら

著者プロフィール

土橋美博(どばし よしひろ)

半導体組み立て関連装置メーカー、液晶パネル製造関連装置メーカーを経て、「メイドINジャパンを、再定義する。」有限会社スワニーに入社。CIOとして最新デジタルツールによるデジタルプロセスエンジニアリング推進に参画する。

ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)、ワールドワイドのソリッドワークス・ユーザーグループネットワーク(SWUGN)のリーダーも務める。


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