クアルコムが国内IoT事業を強化、PFNグループとAWLがISVパートナーに:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
クアルコムジャパンが日本国内におけるIoT事業戦略について説明。エコシステムを構成するISVパートナーとしてPreferred RoboticsとAWLが、EDCパートナーとしてNSWとサイレックス・テクノロジーが加わり、「Qualcomm Aware Platform」のPoCを大日本印刷とマクニカが行うことを明らかにした。
SnapdragonにSLAMやエッジAIエンジンを実装
これらIoT事業の拡大に向けた開発環境整備の一環としてISVパートナーに加わったのがPreferred RoboticsとAWLである。
Preferred Roboticsは、AIスタートアップであるPreferred Networksのロボティクス事業を事業分割する形で2021年11月に創業された。アマノと共同開発した清掃ロボット「HAPiiBOT」や、家庭用から病院、工場までをカバーする汎用の搬送ロボット「カチャカ」などを展開している。これらの他にも、Preferred Networksグループとしてさまざまなロボット開発に携わってきた。
Preferred Roboticsの強みは、Preferred Networksが得意とする深層学習に基づくAIをロボットへ搭載する技術と、ロボットを自律移動させるためのSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術にある。
Preferred Robotics 代表取締役CEOの礒部達氏は「複数の深層学習モデルとSLAMを同時に処理できるような性能を持つプロセッサはどうしても高価になってしまう。しかし、クアルコムのプロセッサであれば、低コストでありながら5つの深層学習モデルとSLAM、ナビゲーションなどを同時に動かすことが可能だ。また、消費電力が低い点も評価が高い」と強調する。なお、この事例で用いたのは「Snapdragon 845」である。
今回のISVパートナーの契約ではクアルコムのロボティクスプラットフォームにPreferred RoboticsのSLAM技術を組み込んでいく内容になっている。併せて、2024年8月27日にPreferred NetworksグループのPreferred Elementsが開発を進めているLLM(大規模言語モデル)「PLaMo」の小規模版「PLaMo Lite」をエッジデバイスで活用するための協業も始める予定だ。
一方、北海道大学発スタートアップのAWLは、小売り分野向けなどを中心に安価にエッジAIを提供することを目指している。既設の防犯カメラをAI化する「AWL BOX」とデジタルサイネージやタブレット端末などのAndroid端末をAI化する「AWL Lite」に加えて、エッジAIをさまざまなプラットフォーム上で展開するためのコア技術「AWL Engine」をライセンス提供するなどしている。
AWLの技術を活用するエッジAIカメラの設置数は1万カ所/1万5000台以上に上るなど導入実績で業界をリードしているという。
今回のクアルコムとのISVパートナー契約では、クアルコムのSnapdragonにAWL Engineを組み込んでいくことになる。AWL 取締役CTOの土田安紘氏は「人数カウンティングの事例では、クアルコムのプロセッサは他社のプロセッサ(Arm系)と比べて高いフレームレートと正確な人数カウンティングを実現していた」と説明する。なお、この事例で用いたのは「QCS610」である。
また、土田氏は「当社が安価にエッジAIを提供することを目指している観点で、ただ性能が高いだけではなくコストパフォーマンスが高い点、開発環境が優れている点でもクアルコムのプロセッサは評価が高い」と述べる。
2023年12月に発表したAwareプラットフォームの国内でのPoCについては、大日本印刷をユーザー、マクニカをSIとして間もなくスタートする計画である。大日本印刷はコールドチェーンの低温維持に関連する取り組みでAwareプラットフォームを活用することになる。
また、組み込み機器の設計支援を行うEDCパートナーに加わるNSWはドライバなどのファームウェア関連、サイレックス・テクノロジーはSOM(System on Module)関連を手掛ける予定だ。
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