中堅中小向けのデジタル事業強化狙うリコー 2024年度はAIなど3領域に注力:製造マネジメントニュース
リコージャパンは2024年度の事業戦略についての説明会を開催した。
リコージャパンは2024年8月21日、2024年度の事業戦略についての説明会を開催した。デジタルサービス事業の売上比率を向上させるため、中堅中小企業などを対象に、「AI(人工知能)」「セキュリティ」「脱炭素ソリューション」の3領域の事業成長に取り組む。
社内の活用事例を基に伴走支援
リコージャパンは2024年度の事業戦略について、「AI」「セキュリティ」「脱炭素ソリューション」の3領域を強化する方針を示している。AIやセキュリティなどのDX(デジタルトランスフォーメーション)や脱炭素などのGX(グリーントランスフォーメーション)に対するニーズについて、リコージャパン 代表取締役社長執行役員 CEOの笠井徹氏は、「日本の中堅中小企業では関心は高いが、どのように進めればよいか分からないという声が多い。ここにしっかり寄り添ってサービスを提供していきたい」と語った。
AIの事業では、自社開発したアプリケーションやパートナー企業の製品などを組み合わせて、リコージャパン社内での実践例から得た知見を基に中小中堅企業などを中心に、業務プロセスの自動化からデータ整備まで含めたAI導入の伴走支援を行う。
リコージャパン社内でのAIアプリケーションの活用例としては、「RICHO Chatbot Service」を使った経費処理や人事問い合わせにおけるFAQ支援などに加えて、レコメンドAIを活用した営業支援、プライベートLLMを活用した保守業務の効率化、「Copilot for Microsoft365」による議事録作成など個人業務効率化などがある。これらの実績を基に顧客への支援を提供する。
またプライベートLLMについては、日英中の3カ国語に対応した700億パラメーターの大規模言語モデル(LLM)を開発したことも発表した。2024年秋から国内企業向けに提供を開始し、海外展開も目指す。
セキュリティの事業では、セキュリティポリシーの策定からソリューションの導入/構築/運用、セキュリティ施策のチェックや見直しなどのサービスを提供する。リコー社内ではネットワークや物理的なセキュリティ対策、社内教育やNIST(アメリカ国立標準技術研究所)のガイドラインに基づく組織体制の整備などに取り組んでいる。これらの知見を全国にあるリコージャパンのオフィスショールーム「ViCreA(ヴィクレア)」で展示するとともに、伴走支援サービスに生かす。
中堅中小企業向けに、内部ネットワークへの侵入からデバイスごとのエンドポイントセキュリティ、インシデント発生後の対応まで多層防御のセキュリティをワンストップで提供する。具体的なサービスとしては、「DDH BOX(digital data hacking box)」を展開するデジタルデータソリューション(DDS)と資本業務提携を締結し、同製品を活用した「RICOH サイバーセキュリティパック インシデント対応サービス」を2023年から提供中だ。2024年5月にDDSと資本業務提携を締結し、さらなる販売拡大を目指す。
脱炭素ソリューションの事業では、脱炭素に向けたロードマップ策定から削減施策の実行、情報開示、助成金や補助金の申請などに関わる支援を企業や自治体向けに展開する。現在、リコージャパンは新規事業所のZEB(net Zero Energy Building)化を推進している。笠井氏は、「当社は約1万8000人が在籍する大企業だが、各地域の事業所にいるのは数百人単位だ」として、実質的に中堅中小企業がZEBに取り組む際のノウハウが蓄積されていると説明した。
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