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ボルトやナットを素早く締めたり、緩めたりできる「ラチェットレンチ」の仕組み100円均一でモノの仕組みを考える(4)(2/2 ページ)

本連載「100円均一でモノの仕組みを考える」では、実際に100円均一ショップで販売されている商品を分解、観察して、その仕組みや構造を理解し、製品開発の過程を考察します。連載第4回のお題は「ラチェットレンチ」です。

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ラチェットの回転機構

 CADデータを使って、回転の仕組みを見ていきます。図6のように切り替えレバーが左に下がっている場合、ギアは時計回りに回転できませんが、反時計回りであれば回すことが可能です。

切り替えレバーが左に下がっている場合のギアの回転方向について
図6 切り替えレバーが左に下がっている場合のギアの回転方向について[クリックで拡大]

 ギアが反時計回りに回る際、切り替えレバーは軸を中心にギアから外れようとする方向に回転する動きをします。この動きによって、ギアから切り替えレバーのツメが一度外れますが、ギアの次のへこみに到達すると、スプリングに押されて切り替えレバーのツメが再びギアのへこみにハマります。この仕組みによって、反時計回りに回転し続けることができます(図7)。

反時計回りの回転について
図7 反時計回りの回転について[クリックで拡大]

 一方、ギアを時計回りに回転させようとすると、切り替えレバーのツメはギアに食い付く方向へ回転しようとするので、切り替えレバーのツメはギアのへこみから外れることなく、そのままロックされて回転しなくなります。

時計回りの回転について(ロックされる仕組み)
図8 時計回りの回転について(ロックされる仕組み)[クリックで拡大]

 そして、ラチェットの回転機構は切り替えレバーを切り替えることで、ギアの反対側に切り替えレバーのツメがハマり、回転方向が逆転します。

切り替えレバーによる挙動の変化について
図9 切り替えレバーによる挙動の変化について[クリックで拡大]

工具以外にも身近なところにラチェット機構が

 さて、このラチェット機構ですが工具ではよく見掛けるおなじみの機構です。特に狭い場所での作業などで、いちいち工具を外さなくても締めたり、緩めたりの動作を繰り返せるため非常に便利です。

 工具以外でもラチェット機構は広く使われています。身近なものでいうと自転車が当てはまります。ご存じの通り、通常、自転車のペダルを後ろに漕いでも(逆回転させても)後ろには進みませんよね。これは後輪の軸に、ラチェット機構が組み込まれているからです。

 ペダルを前に漕げば、チェーンとギアのツメがハマって動力が伝わり、後輪を回転させます。対して、ペダルを後ろに漕ぐ(逆回転させる)と、チェーンはギアのツメにハマらず空転します。この仕組みがあることで、自転車はペダルを逆回転させても後ろに進むことなく、前方向のみにスムーズに前進することができます。 (次回へ続く

⇒「連載バックナンバー」はこちら

著者プロフィール:

落合 孝明(おちあい たかあき)

1973年生まれ。株式会社モールドテック 代表取締役(2代目)。『作りたい』を『作れる』にする設計屋としてデザインと設計を軸に、アイデアや現品に基づくデータ製作から製造手配まで、製品開発全体のディレクションを行っている。文房具好きが高じて立ち上げた町工場参加型プロダクトブランド『factionery』では「第27回 日本文具大賞 機能部門 優秀賞」を受賞している。



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