世界初の製造プロセスを採用した高飽和磁束密度低鉄損コア材の量産化に成功:材料技術
ネクストコアテクノロジーズは、打ち抜き加工が可能な高飽和磁束密度低鉄損コア材「HLMET(ヘルメット)」の量産化に成功した。
ネクストコアテクノロジーズは2024年8月26日、打ち抜き加工が可能な高飽和磁束密度(Bs)低鉄損コア材「HLMET(ヘルメット)」の量産化に成功したと発表した。2024年内に生産体制を整備し、2025年から本格的に顧客企業への提供を開始する予定だ。
電力損失を従来のモーターに比べて約70%低減
HLMETは、電磁鋼板と同等の飽和磁束密度(Bs≧1.8T)を確保しながら、鉄基アモルファス合金と同等の低鉄損性能を有している。さまざまなモーターの小型/高出力化に貢献する他、電力損失を従来のモーターに比べて約70%低減可能な省エネルギーモーターを実現する。
これまで高Bs低鉄損材は、高性能モーター向けコア材として多くの企業が実用化に向けて取り組んできたが、従来の高Bs低鉄損材はいずれも鉄基合金の金属組織を数十nmの微細結晶組織にすることで、高Bs低鉄損性能を得ていた。ナノ結晶化することで性能を確保できるものの、素材が脆くなるためにモーターコア化が難しく、実用化には至っていなかった。
そこで、同社は、およそ0.1nmの結晶前駆体レベルまで微細化する金属組織制御技術を用いてHLMETを開発した。また、従来のナノ結晶材では必須であった結晶化熱処理がHLMETでは不要あり、結晶化熱処理を必要としない高Bs低鉄損材の製造プロセスを世界で初めて実現した(同社調べ)。
同社では、家電機器や電気自動車(EV)だけでなく、生産工程の自動化を図るシステム(FA)や次世代のエアモビリティなど、低回転域から高トルクまでが必要な多様なモーターでHLMETの採用を見込んでいる。
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