三菱電機が次世代光ファイバー向け受信用光デバイスを開発、生成AIで需要拡大:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
三菱電機は、次世代の光ファイバー通信速度となる800Gbps/1.6Tbpsに対応可能な受信用光デバイス「800Gbps/1.6Tbps 光ファイバー通信用200Gbps pin-PDチップ」を発表した。
三菱電機が得意とするInP系の技術を基に受信用光デバイスに参入
三菱電機が光デバイスの技術として強みにしてきたのが、赤外線の発光に最適なInP(インジウムリン)系である。既に市場投入している200Gbps EMLチップは、InP系の技術を基に独自に開発したDFB(分布帰還型)-LDと光変調器を組み合わせたハイブリッド導波路構造によって実現したものだ。
一方、受信用光デバイスであるPDで一般的に用いられてきたのがSiGe(シリコンゲルマニウム)系のデバイスである。しかし、動作速度100GbpsまではSiGe系で対応できるものの、800Gbps/1.6Tbps向けに求められる動作速度200Gbpsの受信用デバイスになると物性的にSiGe系よりもInP系が優位となる。そこで、InP系の光デバイスの開発ノウハウや製造技術、生産能力で一日の長がある三菱電機として、今回の200Gbps pin-PDチップから市場に参入することを決めた。
なお、200Gbps pin-PDチップは、動作速度200Gbpsを可能にする広帯域化を実現するため、チップ裏面側から光を入射する裏面入射型構造を新たに採用した。これにより光電変換領域のpin接合系径を縮小することが可能になり、帯域を従来の約30GHzから60GHz以上に広帯域化することが可能になる。また、入射光の受光領域を広く確保するため、光が入射するチップ裏面側に凸レンズを集積している。
また、凸レンズ集積構造によって受光領域の直径が従来比2倍の40μmに拡大している。光トランンシーバーで用いられる光のビーム径は10μm程度だが、受光領域が拡大したことにより光トランンシーバーの組み立て工程における入射光の高精度な調整が不要になりメリットがある。さらに、受信用光デバイスの後段に来る信号増幅用ICとの接続について、従来はワイヤボンディングを用いていたが、200Gbps pin-PDチップでは電極を設けたチップ表面を反転させて実装するフリップチップとなっている。これにより、ワイヤボンディングに必要なコストを削減できるとともに、高周波信号伝達の阻害要因になり得るワイヤーをなくすことにもつながるという。
200Gbps pin-PDチップの外形寸法は0.38×0.36×0.15mm。感度は0.60A/W、帯域は60GHz。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 三菱電機のパワーデバイス事業は2030年度にSiC比率30%へ、鍵はモジュール技術
三菱電機が重点成長事業の一つであるパワーデバイス事業を含めた半導体・デバイス事業の戦略について説明。SiCモジュールをEV向けに展開するなどして、2030年度のパワーデバイス事業におけるSiC関連の売上高比率を30%以上に高めたい考えだ。 - 三菱電機がxEV用パワー半導体モジュールの新製品、SiC-MOSFET前提に設計刷新
三菱電機がEVやPHEVなどxEVのモーター駆動に用いるパワー半導体モジュールの新製品「J3シリーズ」について説明。同社の車載パワー半導体モジュールの量産品として初めてSiC-MOSFETを搭載しており、従来品と比べてモジュールサイズを60%削減するなどモーターを駆動するインバーターの小型化に大きく貢献できる。 - 三菱電機がSBD内蔵SiC-MOSFETのサージ電流集中の原因を解明、新チップ構造で克服
三菱電機が大容量のフルSiCパワーモジュールでもSBD内蔵SiC-MOSFETを適用可能とする新たなチップ構造について説明。同技術を適用した大型産業機器向け3.3kVフルSiCパワーモジュールのサンプル出荷も始めている。 - NTTが1波長当たり光伝送で世界最大容量の1.2Tbpsを実現、伝送距離の拡大も
NTTは、1波長当たり1.2Tbpsの光伝送を実現するデジタルコヒーレント信号処理回路と光デバイスを開発したと発表。これまでは1波長当たりの容量は800Gbpsが最大だったため「世界最大」(同社)を実現した。800Gbpsの光伝送距離を2倍以上に拡大することにもつなげられるという。 - NTTが光電融合技術の開発を加速、1Tbpsでチップ間光伝送が可能な光電変換素子も
日本電信電話(NTT)は、「NTT R&Dフォーラム2020 Connect」において、同社が推進する光ベースの革新的ネットワーク構想「IOWN(アイオン)」を構成する先端デバイス技術を披露した。 - 5G商用化に向け部品メーカーも加熱、三菱電機が基地局向け光通信用デバイス投入
三菱電機は2018年9月4日、第5世代(5G)移動通信基地局向けの光通信用デバイス「25Gbps EML CAN」を同年11月1日に発売すると発表した。