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三菱電機のパワーデバイス事業は2030年度にSiC比率30%へ、鍵はモジュール技術組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

三菱電機が重点成長事業の一つであるパワーデバイス事業を含めた半導体・デバイス事業の戦略について説明。SiCモジュールをEV向けに展開するなどして、2030年度のパワーデバイス事業におけるSiC関連の売上高比率を30%以上に高めたい考えだ。

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三菱電機の竹見政義氏
三菱電機の竹見政義氏

 三菱電機は2023年5月29日、オンラインで開催した経営戦略説明会「IR Day 2023」において、重点成長事業の一つであるパワーデバイス事業を含めた半導体・デバイス事業の戦略について説明した。次世代パワー半導体であるSiC(シリコンカーバイド)デバイスへの投資を強化するとともに、同社が得意とするパワーモジュール技術を適用したSiCモジュールをEV(電気自動車)向けに展開するなどして、2030年度のパワーデバイス事業におけるSiC関連の売上高比率を30%以上に高めたい考えだ。

 三菱電機 上席執行役員 半導体・デバイス事業本部長の竹見政義氏は「パワーデバイスは脱炭素に向けた中期的な市場拡大が見込まれる。特に自動車分野は、電動化の進展やSiCの採用加速によって市場をけん引していくと見ている。この大幅な電力損失が可能なSiCについて、当社は自動車分野でさらなる強化を図っていく」と語る。

半導体・デバイス事業を取り巻く市場環境と三菱電機としての成長の方向性
半導体・デバイス事業を取り巻く市場環境と三菱電機としての成長の方向性。最も注力するのが自動車分野のSiCだ[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 これまで、三菱電機におけるSiCデバイスの前工程の生産は、パワーデバイス製作所熊本事業所(熊本県合志市)の6インチラインで行われてきた。同社は2023年3月、SiCデバイスの生産体制強化に向けて約1000億円を投資し、最新設備から構成されるSiCデバイスの8インチラインを有する新工場棟を泗水地区(熊本県菊池市)に建設する計画を発表している。2026年度稼働開始予定の新設の8インチラインに加えて既存の6インチラインを増強することにより、2026年度のSiCデバイスの生産能力は2022年度比で約5倍になる。

パワーデバイス事業の製造拠点と今後の能力増強計画
パワーデバイス事業の製造拠点と今後の能力増強計画[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 現行の主力製品であるSi(シリコン)デバイスの前工程の生産についても、福山事業所(広島県福山市)への導入を進めている12インチラインを計画通り2024年度から稼働させる計画だ。先行して福山事業所に導入した最新の8インチラインの技術を活用して、熊本事業所のSiデバイスの8インチラインの生産効率を高めていく。これらの取り組みにより、2024年度のSiデバイスの生産能力は2020年度比で約2倍になる。

 三菱電機が強みとする、前工程で生産したパワーデバイスを適切な設計でパッケージングし高効率を実現するパワーモジュールは後工程の果たす役割も大きい。この後工程について、設計開発から生産技術検証に至るまでを一貫して行う新工場棟を福岡事業所(福岡市西区)に建設する。投資金額は約100億円だ。

 これらSiCデバイスの前工程や後工程の新工場棟建設によって、2021〜2025年度の累計設備投資額は、従来の約1300億円から倍増となる約2600億円となった。2026年度以降についても「さらなる事業拡大に向けて積極的な成長投資を継続していく。2021〜2025年度と同等以上を視野に入れて検討する」(竹見氏)という。

パワーデバイス事業の設備投資額
パワーデバイス事業の設備投資額。泗水地区のSiCデバイス8インチラインは省エネと自動化を徹底した最先端工場となる[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 三菱電機のパワーデバイス事業の業績は2022年度が売上高2100億円、営業利益率8.4%を達成しており、2025年度目標の売上高2400億円、営業利益率10%以上に向けて計画通り伸長している。

 これら2025年度までの業績においてSiC関連の売上高比率は10%にも満たない。この状況から2030年度までの5年間で30%以上にまで一気に伸ばすというのが、今回の発表の骨子である。2026年度に稼働を開始するSiCデバイスの8インチラインへの投資はそのためにも必須の施策となる。

パワーデバイス事業の業績推移
パワーデバイス事業の業績推移。2030年度にSiC関連の売上高比率を30%以上に伸ばす[クリックで拡大] 出所:三菱電機

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